vol.407『社風を変える小さな変化を起こそう』

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.407

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 


『社風を変える小さな変化を起こそう』

 

「デニーズが路面で小さな弁当屋を展開」という
ニュースをTVで知りました。
同社のWithコロナ時代の新戦略です。

 

わが国を代表する企業が新しいことに取り組むと、
日本がこれからどんどん良い方向に変わっていく、
そんな予感がしますね!

 

「小さな変化」が、「これから大きく変わっていく」の
予兆となり、「全体の変化が加速する」ことは
会社内でもよくあることです。

 

実際に私のクライアントでも、
ある小さな変化が、
会社を劇的に変える引き金となっています。
今日はその事例を紹介します。

 

この会社は150人ほどの製造業です。
コロナの影響を受け始めた4月から、
社長と製造部門の3人の部長の計4人で
毎月1回の幹部研修を始めました。

 

同社の課題は、社風でした。
業績は良いのですが、上司達が現場に入り込んで
なんでも自分で行ってしまうために、
現場の人たちの主体性が発揮されずにいたのです。

 

その研修の一環で、6月に社員アンケートを実施しました。
そのアンケート結果の中に一つ気になることがありました。
それは「あなたは休日明けに仕事をするのは楽しみですか?」
という問いです。この得点が他に比べて低かったのです。

 

そこで7月以降、この研修の場でこの問題を取り上げました。
ハッピーマンデープロジェクト(HPM)と名付け、
どうしたら月曜日会社に行きか行きたくなるか
4人でディスカッションしました。

 

そして「どうしたら月曜日の出勤が楽しみになるか」、
全社員に今一度アンケートで尋ねたのです。

 

様々な提案や要望が集まりました。
そのひとつに「昼食にカレーライスが出たらいい」がありました。

 

同社は近隣の給食センターからお弁当を取り寄せています。
お弁当はいつも温かく、大変美味しいです。
しかしカレーはメニューの中にありませんでした。

 

そこで給食センターにカレーが可能か問い合わせてみました。
するとカレーは仕込みに時間がかかるので、
月曜日は無理だが、他の日なら良いという返事でした。
またコストアップになるという返事も頂きました。

 

しかし、この会社ではカレーをメニューに加えました。
たとえ月曜日でなくても、カレーライスのとき、
社員はいつもより米を多く食べます。
体力がつき熱中症予防になるからです。

 

こうしてカレー給食が始まったのですが、
社員の中に変化がありました。
「会社が自分達の方を向いている。
自分たちの意見を真摯に受け止めて対応してくれている」
と気づいたのです。

 

そして、今の会社は変わろうとしている。
これからどんどん良くなっていくのではないかとの
予感が生まれ始めたのです。

 

同時にHMPでは、月曜日の朝の1時間を
作業時間ではなくミーティングの時間としました。

 

従来、朝一番から機械を稼働させ、生産していました。
が、時々機械が停止する大きなトラブルが発生しました。
そのトラブルの要因の一つに、
休み明けで社員の注意力・体力ともに不活性という
事情があったのです。

 

そこで、有名な「時間のマトリックス」で考えてみました。
仕事には以下の4つの領域があります。
「緊急で重要な仕事」(第一領域)
「緊急でないが重要な仕事」(第二領域)
「緊急だが重要でない仕事」(第三領域)
「緊急でも重要でもない仕事」(第四領域)

 

このうち会社を成長には、
第二領域を行うことが欠かせません。
具体的にはチームミーティングをしたり、計画を練ったり、
社員を教育したり、次の準備をする時間です。

 

同社では忙しさのあまり、
この時間を十分に確保できていませんでした。

 

そこでこの第二領域の時間を、毎週月曜日の朝一番に確保しよう。
生産開始は1時間遅らそう。
機械の稼働時間は1カ月当たり4時間の減少となるが、
ミーティングや教育をしっかりすることによって、
生産性を上げて取り返そう、と考えたのです。

 

研修に参加していた部長たちは、
何度もシミュレーションを繰り返し、
第二領域の時間を毎週1時間、月曜朝一に確保することで、
第一領域の時間や、その反動による第四領域の時間を
減らせるとことを確証しました。

 

すると驚くようなこと起きました。
まだ9月から1ヶ月程度の手応えでしかありませんが、
生産性が15%上がってしまったのです。
社長は「これまで20日製造していた量が
17日でできてしまった」と大変驚いていました。

 

同社の場合、コロナ禍で一旦落ちた需要が今戻ってきています。
この需要に対し、今の高い生産性を維持して乗り切れると
社長も部長も自信を深めています。

 

話を元に戻しますと、この会社における小さな変化は
給食のカレーライス採用でした。
次に月曜日の朝の営みの変革が行われ、
生産性が大きく向上する効果がでました。

 

部長たちがコミュニケーションの方向を変え、
現場の意見を「時間の使い方」に反映させたことで、
ドミノ倒しのような変化が加速的に起きたのです。

 

あなたの会社の社員には
Withコロナを生き抜くための変化の兆しは見えていますか。
制約もあり、小さな変化しか起こせないかもしれません。
が、小さな変化で良いのです。
最初のドミノを倒しましょう。