vol.405『リーダーは2つのリーダーシップを使い分けよ』


V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.405

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『リーダーは2つのリーダーシップを使い分けよ』

 

以前このメルマガで、
「ナンバー1とナンバー2の違い」をお伝えしました。
一言でいえばナンバー1は攻める人、
ナンバー2は守る人です。

 

中小企業において、変化のトレンドを読み、
次のイノベーションを起こすことは
変化の過程で欠かせないことです。
そのネタを探し、決定するのはナンバー1の仕事です。
ナンバー2の仕事は、それができる環境を作ることです。

 

イノベーションを推進すれば、
社内からは反対意見が続出します。
それを受け止め納得させ、新たなやり方を定着させる。
これはナンバー2の仕事です。

 

菅総理大臣の仕事ぶりを見ていますと、
矢継ぎ早に新たな方針を打ち出していますね。

 

それまでナンバー2だった人がナンバー1になったときは
自分の役割と仕事をどう変えるべきか、
大変わかりやすい例かと思います。

 

このようにリーダーは、立場によって
一人二役を演じないといけないのですが、
今号のメルマガでは、同じナンバー1の立場であっても
環境に応じて二つのリーダーシップを
使い分ける必要があるという話をします。

 

リーダーシップには2種類あります。
一つはトップダウン型のリーダーシップです。
もう一つはボトムアップ推進型のリーダーシップです。

 

トップダウン型は、変革が必要なときに、
リーダーの特権である人事権や予算決定権を用いて
変革を推し進めるリーダーシップです。
イメージとしては生涯変革を続けた織田信長です。

 

この時リーダーは、変革がもたらす影響が大きすぎて
組織のメンバーの誰が口には出せないようなことを
あえて宣言する必要があります。

 

誰も言えないことを宣言してやろうというのですから、
社内からは嫌われます。
周囲からは評価されず、非難ごうごうです。

 

誰もやったことがないことに挑むので
うまくいくか分かりません。
全責任は自分が背負う覚悟が必要です。

 

宣言前に誰かに相談すれば、
必ず「やらない方がいい」と言われてしまうので、
誰にも相談できずに一人で決めるしかありません。

 

このような孤独に耐えつつ、
評価は後からついてくると信じて決断実行するのが
トップダウン型のリーダーです。

 

一方、ボトムアップ推進型のリーダーシップは、
劇的な変革を必要としない環境下で、
仲間の力を最大限に引き出し、
改善を重ねながら成長するときに発揮します。

 

その時、仲間を導くリーダーが意識しなければいけないのは
次の3点です。
(1)良い人間関係を築く
(2)目的と目標を明確にする
(3)社員一人ひとりに役割を与える。
仲間のために力を発揮してくれる人を承認する

ここで、あなたはどちらの型のリーダーですか?と
尋ねるつもりはありません。
リーダーであれば、環境に応じて
同じ人がある時はトップダウン型になり、
ある時はボトムアップ型になる必要があります。

 

コロナ禍の中、たくさんのリーダーにお会いしました。
市場が激しく変化している会社のリーダーは、
嫌でもトップダウン型のリーダーシップを発揮し、
社内変革を進めています。

 

例えば、新たな販路開拓です。
従来の販路が縮小してしまったので、
自社商品が売れる新たな販売開拓ルートとして
ネット通販などに活路を見出そうとしています。

 

あるいは新規ビジネスの探索です。
自社の市場の縮小傾向が加速化したために、
自社のリソースが活かせる
新規ビジネスを必死に探しています。

 

さらに働き方改革の推進です。
在宅勤務でも生産性が落ちないと確信した社長は、
地域のコロナ感染状況にかかわらず、
社員に週の半分は自宅で働くよう、在宅勤務を強要しています。
その方が社員の幸福感の高い経営ができるとわかったからです。

 

一方でコロナ禍の影響が軽微な会社は、
変革の必要がないため、従来同様に
ボトムアップ推進型のリーダーシップで経営をしています。

 

こうした会社に共通しているのは
社内の人財育成に力を注いでることです。
ボトムアップを推進するためには、
何より現場のリーダーの思考力、行動力が
任せて安心と言えるくらいに優れていないといけません。

 

コロナで業務量やや減った今こそ、
従来からやりたかった社内の制度改革や、
人財育成に力を注ぐ好機だと考えているのです。

 

こうしたボトムアップ型のリーダーも
自分が所属する業界が技術革新などによって一気に変わるときや、
自然災害の影響など予期せぬリスクに見舞われたときは、
その瞬間からトップダウン型のリーダーに
変貌しなくてはいけません。

 

ナンバー2からナンバー1になったとき、
また同じナンバー1の立場にあっても、
変革を断行する時と、力を蓄えるべきとき。
一人で何役も使い分けるのがリーダーの役目です。

 

そのため、ある人物の伝記だけを読んで
「リーダーはかくあるべき」と思い込むのは早計です。

 

多くのリーダーと出会って交流し、
「なぜ今、それをするのですか?」を質問し、
そのリーダーのものの見方、考え方、
時間軸のとらえ方などを学ぶことがとても大事なのです。