vol.397『経営と事業は何がどう違うのか?』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.397

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『経営と事業は何がどう違うのか?』

 

突然ですが、あなたは「経営とは何か?」を
自分の言葉で説明できますか?

 

コンサルタントになると長年やっていますと
突然クライアントから
「経営とは何か?」と
根本的なことを尋ねられることがあります。

 

「仕事なんか誰でもできる。経営を教えてやって欲しい」
これは、後継者の育成を依頼された時でした。
ご子息は現場が好きで、役付き役員になった後も
一社員のように現場を走り回っていたのです。

 

A社長の中では、「仕事と経営は違う」
という明確な定義がありました。
それを受け止めないと、後継者の育成はできません。

 

こんなケースもありました。
B社長がCという小さな会社を M & A しました。
C社の事業は成長力があり、大変魅力的でした。
しかしながら身の丈を越えて規模拡大したため、
経営が行き詰ってしまったのです。

 

この時B社長は次のように言いました。
「C社の社長は事業はできるかもしれない。
が、経営はできない」

 

B 社長の頭の中にも、経営とは何か明確な定義があります。
そして、それは事業とは異なるものなのです。

 

では経営とは一体何でしょうか?
一般的には「儲けること」や
「ヒトモノカネを動かして稼ぐこと」としまいがちです。
しかしそれでは事業との区別がつきません。

 

そこで、まずは言葉の意味を探ってみましょう。
経営の経は「お経」の「経」です。
辞書には「経=聖典」と書いてあります。
聖典は正しいことが書かれたものです。
正しいことを営むのが経営だということです。

 

しかしこれだけではよくわからないので、
偉人の言葉にヒントを求めましょう。

 

私がこれまで最も胸を打たれた経営の定義は、全日本経営人間学協会で
竹内日祥上人に教えていただいた以下の五つです。

 

一、経営とは、経世済民の高い志を実行に移すことである。
一、経営とは、人間の究極の理想と目的を、
  実業の現場で実現することである。
一、経営とは、人間の持つ無限に深い可能性に、
  確信の信を置き、 価値の創造に努めることである。
一、経営とは、人間の持つ最も醜い力を、
  最も美しい価値に、転換させることである
一、経営とは、いかなる絶望的な境遇にあっても、
  その中からつねに知恵と力と勇気を、奮い起こすことである。
(経営人間学講座 道場規範より)

 

何れも大変迫力のある言葉ですね。
一つ一つ見ていきましょう。

 

一つ目には「経世済民の志」という言葉が出てきます。
「経世済民」とは世の中を治めて人々を苦しみから救うことで、
「経済」の語源です。
「人々を苦しみから救う」とありますので、
経営とは社会的問題を見つけて自分ごとと
引き受けて解決することとなります。

 

二つ目には「人間の究極の理想と目的を実現」とあります。
では「人間の究極の理想と目的」とは何でしょうか?
ひと言でいえば、それは「幸せ」だと思います。
関わる人すべてを幸せにし、
その喜びを実感する行為。それが経営となります。

 

三つ目には「人間の持つ無限の可能性に、
確信の信を置き、価値の創造に努める」とあります。
難しい問題から逃げず、自分と仲間を信じて挑戦し、
「できっこない」を「できる」に変えていくこと。
それが経営となります。

 

四つ目には「人間の持つ最も醜い力を、
最も美しい価値に、転換させること」とあります。
では「人間の持つ最も醜い力」
「最も美しい価値」とは何でしょうか?

 

いろんな考え方があると思いますが、
私は「最も醜い力=私利私欲」だと思います。
そして「最も美しい価値=利他の心」だと思います。
私利私欲に走っていた人が、失敗を重ねるうちに
自分の愚かさに気が付いて周囲のために尽くしはじめる。
その転換を促すのが経営となります。

 

五つ目には「いかなる絶望的な境遇にあっても
その中から知恵と力と勇気を奮い起こすこと」とあります。
私たちは阪神や東日本に生きる人たちが
震災の絶望的な環境から復興する姿を目の当たりにしました。
大切なことを次の世代に繋いでいくために、立ち上がる。
それが経営となります。

 

こうして考えると、経営は仕事や事業と
随分違うものだということがよくわかりますね。

 

経営者は、この5つ全て覚える必要がないと思います。
どれか一つ自分にとってインパクトのある定義を腹に落とし、
冒頭のA社長やB社長のように
仕事と事業の区別を自分なりに付けて頂くと良いでしょう。

 

あなたの心を打った定義は何番目の教えでしょうか?

 

ビジネスマンにとって大変楽しみなドラマ
『半沢直樹』が始まりました。
登場するサラリーマン及び経営者たちが
血みどろになって繰り広げているのが、
仕事なのか事業なのか、はたまた経営なのか。

 

経営者が発する言葉は、
経営者の言葉として相応しいものなのか?

 

そんな目線で見ていただくと、
このドラマも一層面白くなるでしょう。

 

 

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