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vol.537「職場が変わるリスペクト・ミーティング」


リスペクトの新たな波

毎月一度、戦略会議に出席させて頂いているクライアントがあります。
入り口はデジタルロック方式。京アニ事件の後、社長が社員を守るためにカギを付けました。

そのため入るときはベルを押して中の人を呼びます。先日、いつものように「V字研の酒井です」と告げると、「お待ちしていました」との返事をいただきました。

こういうの、なんだかとても嬉しいです。「いらっしゃいませ」「ようこそ」はあっても、「お待ちしていました」はなかなかないです。リスペクトを感じて心にしみます。

そんなリスペクトが、最近どうやらブームのようです。昨秋、渋谷のパルコで開かれた「いい人過ぎるよ美術館」。この展示会は、その後全国各地で開かれています。現在は、広島で開催中。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002772.000003639.html

何が展示されているかというと、日常の中に存在する「いい人だね」と思わず言いたくなるようなシーンが言葉やイラスト、フィギュア等の形で展示されています。例えばこんなシーン。

「トレイ返却時に『ごちそうさまでしたー』と言って帰る人」
「オンラインMTGで一人でも画面ONの人」
「『車通りますー』って車を止めてくれる人」(スタンドの出口などで)
「七夕で『ここにある短冊の願いが叶いますように』と
 ベクトルがみんなを向いている人」
「自己紹介で『じゃあ、私から』って始めてくれる人」
「ビュッフェでお寿司があることを教えてくれる人」
「コピー機の用紙が切れる前に補充してくれる人」…等

こうした他人へのリスペクトから生まれた小さな気配りは、とりわけZ世代の共感を呼び、多くの来場者を集めています。また、展示物を掲載した書籍『いい人過ぎるよ図鑑』も出版されています。

https://books.rakuten.co.jp/rb/17717519/

ブームの背景には、仕事のリモート化が進み、人間関係が以前より乾いた感じになっていることがあるのでしょう。だからこそ、自分が大切にされていると実感できるリスペクトが有難く心に染みるのだと思います。

リスペクトによる職場文化の変革

こんな心配りが職場に溢れたら、人間関係は良くなって、離職者も休職者も減り、きっと業績も上がることでしょう。そこで私は、幹部社員研修時に、「ああ、自分は職場で大切にされているな、尊重されているな」と感じた経験を書き出してもらい、それを仲間と共有するワークをやってみました。すると、次のような意見が出てきます。

・帰るときに「お疲れさまでした~」と声をかけてくれた
・自分の心配事に「それは心配だね~」と共感してくれた
・遅刻をした時に、私のことを思って叱ってくれた
・アウトプットを見て「〇〇の才能がありますね」と
 フィードバックをくれた
・上手くいかないときに、対策を一緒に考えてくれた
・資格試験に挑む時に、「きっと、大丈夫」と応援してくれた
・一人で残業していると社長が「君はそのままでいいよ」と
 声をかけてくれた
・体調不良で半休を取ろうとしたとき上司が
「無理しなくていいよ」と言ってくれた
・上司に相談した時、ノートを持ってきて聴いてくれた
・怒っているお客様に対し上司が一緒に謝りに行ってくれた
・忙しいときに周囲の人が率先して手伝ってくれた
・一時的な業務量過多で焦ったり困ったりした時に、
「分担しよう」と声を掛けてもらえた
・連休で帰省した後、実家の家族の様子を上司が気遣ってくれた…等

いかがでしょうか?皆さん、身に覚えがあるのではないでしょうか。とりわけ上司が「ノートを持って話を聴いてくれた」とというように、細かいことが人に伝わるのです。

リスペクトのバランスと実践

この研修では、この他にもこんな意見が出ました。
・常に難題を与えてくれる
・会議で自分の意見が採用された
・自分の間違いを指摘して、フォローしてくれる
・危険な行動を指導してくれる
・「この案件は君に任せたから、やり切ってみろ」と言われた
・計画を提出したときに「任せられるようになったな」と言われた
・関係部署への問い合わせの返事が凄く速かった…等

こうした体験談からわかるのは、優しさも大事ですが、それだけでなく成長のための厳しさも必要だということです。

人は群れでないと生きていけない動物です。群れでいる以上、自分が誰かの役に立たないと存在価値はありません。それゆえに本能として「誰かの役に立ちたい」「できなかったことができるようになりたい」という成長欲求を持っています。が、「若い社員に辞められたら困る」とか「パワハラと思われたくない」などの観点から厳しく指導できない上司が少なくありません。

するとその部下たちは成長欲求が満たされず、「ここにいても成長できない」と不満を感じます。こうした企業を「ゆるブラック」と言います。「ゆるい+ブラック(闇)」で、離職原因の一つになっています。上司は、この優しさと厳しさのバランスを取りながら、部下を育てていく必要があります。そのバランスを取るためのキーワードがリスペクト(尊重)です。

上司は部下をリスペクトし、部下は上司をリスペクトする。そして半径5m以内にいる人に、上記のような心配りを心がける。そうすれば、会社はきっと楽しくて幸せな場所になります。

私の研修の締めは、上記のように受講生の体験を書き綴ったホワイトボードを示しながら「ここに書いたのと同じことを、部下にしてあげてくださいね」。単純ですが、社員がお互いのリスペクト体験を話し合うミーティング。

あなたの社内には見える化できていないだけで優しくて「いい人過ぎる」人も厳しくて「いい人過ぎる人」が大勢います。ぜひ、貴方の職場でもリスペクト・ミーティングを実施してみてくださいね。

リスペクト・ミーティングを職場でやってみたい方へ

リスペクト・ミーティングを実際に行うときに生まれる疑問や不安にお答えする動画をご用意しました。以下のような疑問に答えていますので、実際に実施する前にぜひ動画をご覧ください!


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