V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.521
by V字経営研究所 代表 酒井英之
「ジャニーズ事件を題材に人権問題について考える」
ジャニーズ事務所の謝罪会見以来、
スポンサー企業は同事務所の所属タレントを
CMに起用しない方針を打ち出しています。
以来、人権について考えることが増えました。
人権侵害をしてまで育てたアイドルたちが、
商品として売り出され、集金マシンになってる事実を
容認できないスポンサー企業の考え方には、私も賛同します。
というのも、人権侵害は
世界中にはびこる大きな問題だからです。
特に児童労働は深刻な問題です。
例えば、ボルネオ島のパーム畑で働いている児童労働者は、
子供の頃から学校にも通わず
日々アブラヤシを摘み取る作業をしています。
そのため、大人になってもアブラヤシを取ることしかできません。
彼らは、その仕事が重労働で長時間労働であっても、
それをやる以外に収入を得ることができません。
さらに雇い主に借金をすると、抜け出せなくなります。
よって、一生アブラヤシを作り、摘み取り続けます。
しかも、彼らの子供たちの世代でも同じことが繰り返されます。
そうした奴隷のような人生を送る人を救うために
求められているのが、買う人の良心です。
例えば、あなたは以下の2つの商品のうちどちらを選びますか?
1)児童労働が行われているプランテーションで栽培された
カカオを使用したチョコレート。値段は安い、味は美味しい。
2)児童労働がないプランテーションで栽培された
カカオを使用したチョコレート。値段は高い、味は美味しい。
安くて美味しいものが欲しい方は1)を選ぶでしょう。
それはカカオ原料の機能を消費する「機能消費」だからです。
一方、高くても社会的に問題のないものが
欲しい方は2)を選ぶでしょう。
それはそのカカオがどのようにして栽培、収穫されたのか
その目的や意味を理解し、共感して消費する
「意味消費」あるいは「応援消費」だからです。
カカオ業界には、そうした「意味消費」を推奨するため、
世界的な農園経営を支援する財団があります。
「カカオホライズン財団」と言います。
https://www.cocoahorizons.org/ja
同社では2)のようなカカオのことを
「サスティナブルカカオ」と呼んでいて、
その製品にはマークが施されています。
浜松市にある私のクライアントは、菓子の原材料問屋ですが、
自らの展示会でSDGsの大切さをPRしています。
このとき、お客様である洋菓子メーカーや洋菓子店に
「サスティナブルカカオ」の採用を提案しています。
消費者がそのような商品を選べば、
児童労働のような人権侵害が自ずと減り、
SDGsの実現に寄与すると考えているからです。
こうした「意味消費」やSDGsなどの
社会課題の解決のために挑み応援する「応援消費」が、
今、どんどん増えてきています。
話をアイドルに戻しますが、
韓国人の音楽プロデューサーJ.Y.Park氏が育てる
アイドルユニットも、
実力+「応援消費」で大変人気が高いです。
わが国ではNiziU(ニジウ)が有名で、
2年連続で紅白歌合戦に出場しています。
このユニットは、コンテストから誕生します。
まず、アイドルになりたい10代の子供達が、
個別に応募します。
歌やダンスの予選を勝ち抜いた子供が、
合宿所で厳しいレッスンを受け、
自分の歌やダンスのパフォーマンスを磨いていきます。
そして、いくつものテストに挑み、
その都度振るにかけられて、
最終的に残った何人かがユニットになって
デビューするという流れです。
https://niziproject.com/
その模様がYouTubeで毎度配信されます。
この配信番組は、甲子園のダイジェストを伝える
テレビ番組「熱闘甲子園」のように構成されています。
挑戦する子供たちのテスト時のパフォーマンスだけでなく、
スタジオ以外の場所で一人ひとりが悩んでる様子や、
お互いに励まし合い支え合い
協力し合ってる様子も放映されます。
最初から上手にできる子もいれば、
努力して上手になっていく子もいます。
よって自然と応援したくなる子もいますし、
ユニット自体を応援したいという気持ちも湧いてきます。
さらにこの番組の魅力は、J.Y.Park氏の
テストを受けた子供たち一人ひとりへの
フィードバックコメントにあります。
以下は、私が見ていてとても感心したコメントです。
「あなたはこのユニットのリーダーです。
あなたがステージの上で他のメンバーがどうか気にしていましたね。
リーダーが他のメンバーのことを気にしていては、
観ているお客様も気にしてしまいます。
ステージの上では楽しんでください。
すると、見ている人も楽しむことができます」
「カメラの前でできない言葉や行動は、
カメラのない場所でも絶対にしないでください。
気をつけようと考えないで、
気をつける必要の無い立派な人になって下さい」
「短所がないことより、
短所を克服していけることがもっと大切です」
こうした言葉を10代の子供たちに投げかけるのです。
決して彼らを子供扱いしません。
出身や肌の色などの差別もありません。
一人の人として尊重しています。
それが伝わるからこそ、10代の彼ら(彼女ら)は
J.Y.Park氏の指摘を素直に受け止めて
一生懸命自分と向き合い、仲間を支え、スターを目指します。
その姿は、観ている60歳の私にも多くの気づきをくれます。
番組を見た後は、真摯に自分と向き合う10代の子供たちや
含蓄のあるJ.Y.Park氏の言葉を自分に置き換えて、
「自分も頑張ろう」と、前向きな気持ち持ちになることができます。
ジャニーズでアイドルを目指した子供達に、
このような努力がなかったとは思いません。
彼らも血の滲むような努力の果てに
デビューを果たしたのだと思います。
ただその過程がオープンになっておらず、
人権侵害のプロセスが隠されていたとなると、
J.Y.Park氏が育てたユニットのように素直に応援できません。
性能が同じカカオの生産過程に光と影があるように
アイドルの育て方の光と影を見るようです。
ジャニーズは、彼らを大切に思う何万人ものファンのために、
今後もなくてはならない存在でしょう。
社名変更や株主構成など見直しを迫られています。
この際、組織が持つ影の部分と正面から向き合って浄化し、
いつしか「応援消費」の対象として復活して欲しいと思います。
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V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.520
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『挑戦する組織風土をつくるための最初の一歩』
ラグビーのW杯が始まりましたね。
前回同様の熱戦を期待したいですね。
日本ラグビーが世界に通用するようになったのは
2015年、「世紀の大盤狂わせ」と言われた
南アフリカに勝った瞬間からでした。
この試合のことは 皆さんもよくご存知だと思います。
3点を追う終了間際、相手がゴール前で反則を冒します。
その時、日本がペナルティゴールを選択したら、
3点を獲得。同点で試合終了でした。
2度の優勝経験のある南アフリカ相手に同点という、
輝かしい成果を挙げることができました。
この時、ヘッドコーチはスタンドにいました。
「同点を狙え」指示を出していたようです。
ところが選手たちは、自分たちでスクラムを選択します。
スクラムからボールをつないでゴールを奪うことができたら、
5点獲得。逆転勝利できるからです。
が、失敗すれば3点差で敗北です。
同点か、逆転か。
選手たちに「どちらにしよう?」なんて
ミーティングする時間はありません。
選手全員がアイコンタクトを取り、
逆転を選択したのです。
なぜ、全員が同じ選択をしたのでしょう?
それは彼らのビジョンの影響です。
W杯で、日本は過去1勝21敗2分。
世界中から最弱国と思われていました。
その事実を変えたい。その想いから、
彼らは「日本ラグビーの歴史を変える」をビジョンに掲げました。
彼らは歴史を考えるために、
とてもハードなトレーニングを積みます。
合宿生活は年間100日を超えました。
その果てに巡ってきた歴史を変えるチャンスです。
歴史を変えるには、「勝利」が絶対条件。
もし同点で終わったら、歴史を変えたとは言えません。
そのため、誰もが上記の選択をしたのです。
https://www.youtube.com/watch?v=frABImN-M8U
(4:42に選択のシーンがあります)
選手たちのこの行動を、
ヘッドコーチのエディジョーンズは称えました。
ファンも「教え子が指導者を超えた」と賞賛しました。
同じようにわが社の社員たちも
「自分の期待以上に成長してほしい」と思っている
経営者は少なくありません。
とりわけ、「失敗を恐れずに挑戦をしてほしい」と考える
経営者、リーダーは大勢います。
ところが、社員たちはなかなか挑戦しません。
「課題を解決してくれないか?」と要求しても
技術や納期の限界を予期し、何もしないうちから
「すいません、できません」と回答するケースが多いのです。
なぜでしょうか?
ひとつは長時間労働の制約があります。
かつては「徹夜してでも頑張る」という手段が使えました。
今は、その手段が使えません。
時間内ではとても無理、と考えてしまうのです。
もうひとつは、失敗が怖いからです。
「できます」と答えて、その後「やっぱりできませんでした」
となれば、多くの人に迷惑をかけてしまいます。
このとき、「お前はできると言ったじゃないか!」
「何でできないんだ!」と上司や顧客から責められかねません。
それなら最初から「できません」と言った方が安全です。
「NO PLAY NO ERROR
=何もしなければ失敗しない」です。
そこで、挑戦する風土づくりへの第一歩として
是非、リーダーにやっていただきたいことがあります。
それは「失敗とは何か」を定義することです。
失敗にも色々あります ここでは以下の3種類に絞ってみましょう。
(1) 良い失敗
(2) 悪い失敗
(3) 非常に悪い失敗(許されない失敗)
あなたならそれぞれに対しどのように定義しますか?
これを私は管理職研修でよく実施します。
すると、どの会社でも以下のような回答が出てきます。
(1) 良い失敗
・次につながる失敗
・原因がはっきりしている失敗( 改善の余地がある)
(2) 悪い失敗
・慢心し、準備を怠ったことによる失敗
・途中で諦めてしまったことによる失敗
・同じことを繰り返した失敗
(3) 非常に悪い失敗
・何もアクションを起こさなかったことによる失敗
・決められた規則、基準を守らなかったことによる失敗
こうして定義をしておくと、失敗をした時にその失敗が
(1)(2)(3)のどれに当てはまるかを見極め、
対処の仕方を変えることができます。
例えば(1)は、やがて成功につながる失敗です。
失敗を責めるところか「ナイス チャレンジ!」と声をかけ、
果敢に挑んだ姿勢を評価し歓迎します。
そして「セカンドチャンス」を与えます。
(2)は、原因を確かめた上、一度は許します。
が、2度目はありません。
もし繰り返すようであれば、ペナルティを与えます。
(3)は、原因を確かめた上、厳しく咎めます。
評価も下げます。
このような定義をしておいて、予め社員に伝えます。
「失敗には3種類ある。
私は(1)の失敗は大いに歓迎し評価する。
だから失敗を恐れず 果敢に チャレンジしてほしい。
が、(2)(3)は望まない。 特に(3)は厳しく咎める」
そう宣言しておけば、
挑戦を選択する社員は徐々に増えていくでしょう。
すると、何度か失敗したが、その経験を生かして
成功したという物語が多数、組織の中に生まれます。
「先輩も失敗を繰り返して成功したんだ。
先輩の挑戦 姿勢は素晴らしい自分の挑戦してみよう」
という社員が多く出現します。
こうして組織風土は挑戦する組織へと進化します。
2015年の南アフリカ戦の勝利は、
その後の代表チームに自信を与えました。
今回、同じような逆転か同点かのシーンに直面したとき、
きっと「挑戦する」を選ぶでしょう。
その人の挑戦が失敗だったかどうか、
意味付けするのはリーダーの大事な仕事です。
本人が「失敗した…」と落ち込んでいても、
リーダー「ナイスチャレンジ!」といえば
その試みはナイスチャレンジになるのです。
是非、失敗の定義を社員に伝えて、
よい失敗を重ねるチームを作りましょう。
そして、成功体験が多い、
挑戦する組織に変えていきましょう。