V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.506
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『松下幸之助に学ぶ、部下のモチベーションを上げる超簡単な方法』
「どうしたら、社員のモチベーションを上げることができますか?」
管理職研修を行うと必ず出る質問です。
このような質問には、いつも逆質問させていただきます。
「ではあなたにお尋ねします。あなたが上司から、
以下のように相談されたらどう感じますか?」
「この件、君ならどうする?君の意見を聴かせてくれないか?」
「ごめん、この件は君の方が詳しいだろう。
だから一緒に考えてくれないか?」
「頼む。困っているんだ。力を貸してくれないか?」
いかがでしょうか。
こう逆質問された人は必ず「やる気が出る」と言います。
そうなのです。
部下のモチベーションを上げたければ、
上司が部下を頼ればいいのです。
松下幸之助翁の口癖は「君はどう思うか?」だったそうです。
これは、部下に意見を求めているのです。
そして出てきた部下の意見に対し、
「なるほどなぁ、君、良いこと言うなぁ。
ほな、この件、やってくれないか」と仕事を依頼します。
すると、部下は喜んでやります。
同じように教えを請うことも重要です
「なるほどなぁ。さすが、よく知っているね。ありがとう。
またわかんないことがあったら教えてね」
といえば、教えた部下のモチベーションは上がるでしょう。
上司に教えを請われたり、頼られたりすると
部下は「組織に必要とされている」と実感します。
そして自分の意見が採用され、その後に仕事を任されると、
自分が「役に立っている」ことを実感します。
さらに任された仕事のアウトプットに対し
「やっぱり君に任せてよかった。素晴らしい!」
などと褒められると、自分に自信を持ちます。
組織の中で自分が重要な存在であるという感じることを
「自己重要感」といいます。
自分の意見を採用され、任されて、評価されると
人は、自己重要感を強く感じ、モチベーションを上げるのです。
この心理を活かして、「業績をV字回復させたい」
「組織全体を活性化し、一体感を高めたい」という
オファーをいただいた時に、私はそのお客様に
必ず以下のことに取り組んでいただいています。
それが「しゃべり場」です。
「しゃべり場」は、上司と社員5~6人が1つのグループになって
約1時間、以下のテーマでミーティングを行うものです。
「私はもっと働きやすい職場を作りたい。
職場をもっと働きやすくするために、
うちの職場、こうだったらいいのにな、
と思うことを教えてください」
参加者にはこのテーマをあらかじめ伝え、
職場の改善すべき点を1人 3つ持ってきてもらうように求めます。
ミーティングではそれを順番に話してもらいます。
そして「なぜそう思うの?」と確認したり、
「他の人も同じように感じているの?」などと
内容を確認しながら進めていきます。
すると、上司が気づいていなかった
良い意見がいっぱい出てくるのです。
出された意見に対しては、
すぐできるものについてはその場で実行を約束します。
検討に時間を要するもの、
即答できないものに関しては上司が預かります。
預かった意見は幹部社員同士で話し合い、
優先順位をつけてできるところから実施します。
優先順位は、すぐできて効果の高いものを第1とし、
効果は高いが時間のかかるものを 第2とします。
もちろん却下する意見もたくさんあります。
また、この点については自分たちで考えてくださいと
社内にワーキンググループ(小集団活動)を立ち上げ、
自分たちで改善策を考えてもらうこともあります。
こうして、現場発信で改善が進むと、
社内の雰囲気が一変します。
「上司は自分たちの方を向いてくれている」
「自分たちのために働きやすい環境を整えてくれている」
「口先だけでなく本気で会社を良くしようと考えてくれている」
こうした上司の意思を、社員たちは
上司のメッセージとして受け止めます。
そして「上司が自分たちの意見を真摯に受け止めてくれるなら、
自分たちも真摯にその期待に応えなければならない」と考え、
一人一人がモチベーションを上げるのです。
先日、社員数約50名の私のクライアントで
全社員を対象にこのしゃべり場を実施しました。
そうしたところ、136件の改善要望が出ました。
その一つ一つを見て、私は大変驚きました。
以下のような意見が多数出されたのです。
・出勤簿や発注書をデジタル化(デジタルで出来ることは全て)
・データ管理を一元化してほしい、重複作業を減らしたい
・TV会議システムの更新→データの共有がしやすいものはないか
・課員の動きをスムーズにするため、予定表の記入方法を工夫する
・写真、台帳作成の簡素化、エクセルオート機能の活用
これらは全体のほんの一部でしかありません。
Z世代社員の多くは、職場でのIT化を強く求めています。
彼らにとっての常識は、同社のこれまでのやり方と
大きく乖離しているのです。
こうした若い人のジレンマに気づかず
40代の社員が自分の若い頃に覚えてやり方をよしとして
疑わないのであれば、早晩、若い人が働きづらさを感じて
離れていってしまうでしょう。
逆に意見を採用し改善が進めば、
上記のようなモチベーションアップにつながります。
社員を頼り、社員に期待し、意見を採用すると
職場の雰囲気が良くなり、業績は必ず好転します。
上司が部下を頼れば部下モチベーションは上がります
それを組織で行えば組織のモチベーションが上がります
モチベーションの上げ方や離職の多さで悩んでる方は、
ぜひ「しゃべり場」を実践してみてくださいね。
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.505
by V字経営研究所 代表 酒井英之
「テスラが当たり前に走る時代に考えたい『意味消費』」
先日、クライアントの社長の車に乗せていただきました。
愛車がテスラになっていたのでとても驚きました。
理由を尋ねると「試乗してみたらなんて面白い車なんだ!と
びっくりしたんで衝動買いしちゃいました」。
テスラは先頃、価格を大幅に下げたモデルを投入しました。
社長によると「クラウンと同じぐらい」とのことでした。
「クラウンを買うか、テスラを買うか」という選択肢の中で
テスラが選ばれたということです。
ここで テスラの魅力について考えてみましょう。
例えばテスラを買った人は必ずこう聞かれるでしょう。
「 なぜテスラを買ったのですか?」
昨年秋、私はノアの新型を購入しました。
が、誰からも「なぜノアにしたのですか?」と聞かれません。
半年になりますが、家族以外から聞かれたことはありません。
たぶんそれは、ノアに限ったことではないでしょう。
500万以下の車の場合、まず聞かれないと思います。
なぜならそれを買った理由が、
単に広い居住性だとか、ワンボックスにしては
燃費がそこそこ良いとかの、機能を求めてたからです。
機能を求めて消費することを「機能消費」と言います。
機能消費は、同じ機能を持つものであれば、
安い方が良いに決まっています。
よって購入の決め手は「価格」になります。
そしてそのような商品を知人が購入したとしても、
大して興味は持たないのです。
ところが、 テスラを買った人は、
「あえてテスラを買った理由」があるはずです。
まだまだ電気スタンドは限られています。
充電の速度も早くなったとはいえ30分はかかります。
そうしたリスクを押してでもテスラを買うということは
何かテスラユーザーになる魅力があって
その魅力を求めているのです。
こうした魅力を求めて消費することを「意味消費」といいます。
意味消費は、価格勝負ではありません。
意味を求めているので、その意味が他にないものであれば、
価格が高くても買うのです。
車の場合500万以上の車であれば
意味消費だと言われています。
レクサスを買った人は「なぜレクサスにした?」と聞かれるでしょう。
BMWやベンツを買った人も「なぜ BMW なのですか?」
「なぜその車種なのですか?」などと聞かれるでしょう。
私のクライアントの常務がBMWのバイクに
乗っていたことがあります。
なぜわざわざBMWのバイクに乗るのか尋ねたら、
常務はお客様に次のように言われたから、とのことでした。
「常務になった以上、前のめりにがんがん攻める姿勢が大事だよ。
そのためには、毎日乗る乗物から前向きなものを選ぶべきだ。
バイクに乗るんだったら、駆け抜ける喜びが味わえる
BMWに乗りなさい。販売店は私が紹介してあげるから」
そして、実際にBMWのバイクに乗ってみたら
「これは今までのバイクと全然違う、とっても快適だ。
気持ちもどんどん前向きになってきたのです」
このお客様の紹介文に出てくる『駆け抜ける喜び』は、
BMW社のコーポレートスローガンであり、
お客様に提供している価値を表す言葉です。
BMWは商品を通してこの価値を提供していて
消費者も、その価値を意味消費してるということです。
こうした「意味消費」は 高額商品の販売を可能にします。
最も身近な意味消費は、ホテルや旅館です。
ホテルは機能消費であれば、ビジネスホテルのように
1万円から2万円ぐらいの範囲です。
ところが、そのホテルや旅館に宿泊することが
特別な意味を持つと、1泊4万円以上の値段でも
あっという間に予約で埋まります。
例えば西伊豆のホテル「WEAZER西伊豆」は、
2人1泊12万以上ですが、
予約がなかなか取れない状態です。
それは、以下のようなコンセプトのホテルで、
1棟しかないからです。
「WEAZERは太陽光から電気を、雨水から水を自給する、
オフグリッド型居住モジュールです。
オフグリッドとは、電気や水道などの既存のインフラから独立し、
電力や水を自給している状態を表す言葉です。
文字通り当施設の客室内は電気や水道、ガスに接続しておらず、
電気は太陽光発電、水は雨水を濾過・滅菌することで賄っております。
また特殊な浄化装置により、汚水排水が発生しないため、
施設周辺の環境を傷めることもありません。
自然の力でエネルギーをつくるので、CO2の排出量はゼロ。
環境に優しく、あらゆる場所での滞在・居住を可能にします」
食事は、同社が別会社で経営しているイタリアンレストランに
電気自動車で送迎してもらい、そこでいただきます。
https://www.chillnn.com/1836d2246923a9
ここに泊まりたいと思う人は
宿泊という機能を求めているわけではありません。
「どこまで 地球環境に優しくなれるか」
そのような意味を求め、体験したくて泊まるのです。
こうした「意味消費」の商品開発は
大企業にはなかなかできません 。
大企業が得意なのは「大量生産」大量販売」です。
販売力が強いために安くて良いものを大量に売りさばく
ビジネスモデルを追求します。
売上100億円以下の新規事業案は社内で相手にされません。
その点、中小企業にとっては、
たとえ売上が10億円でもとても魅力的な事業です。
そして その意味が尖れば尖るほど、
その意味を求めるお客様と出会うことは容易になっています。
ネットで発信すれば、共感する人が集まります。
意味消費に満足したお客様は、 SNSで情報を発信してくれます。
するとさらに、その意味に共感する人が集まります。
意味消費は、尖れば尖るほど、共感者を募ることができます。
低価格品を作って量産量販しようとしても
中小企業には限界があります。
それよりは高価格品を開発したニッチトップを狙いましょう。
日本人は真面目な民族ですから、
機能重視で意味消費を考えるのが苦手です。
学校で優等生だった大手企業の社員が苦手な意味消費こそ、
アフターコロナの突破口です。
もはやテスラは珍しいものではありません。
貴社のアフターコロナの戦略の一つに、
意味商品の開発を加えてみてはいかがでしょうか。
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.504
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『新卒に選ばれ続ける会社の想いと工夫』
新年度になりましたね。
あなたの会社では新人を迎えることはできましたか?
近年は若者の人口の減少もあり、
中小企業の人材採用はますます難しくなってきています。
今のわが国の45~54歳人口は1,971万人。
対して10~19歳は1,106万人にしかいません。
比率にして56.1%。約半分しかいないのです。
これでは従来と同じ募集の仕方で採用するのは容易ではありません。
そんな中、私のクライアントの岐阜県の食品メーカーは
今年新卒を大卒2名、高卒9名の新人を迎えました。
食品は女性にも人気のある職種ですが、
今時社員数100人規模の会社で新卒を
11名も採用できることはすごいパワーです。
しかもそれは、今年だけじゃなく
毎年のように10人規模で採用できていて
なおかつ離職率がとても低いのです。
同社は働き方改革が導入される前までは
離職率の高い会社でした。
過去5年間で採用した20人中、
10人が辞める状態が続いていました。
「この状態を何とかしたい」と私に相談がありました。
そこでお手本にしたのが、業種が似ている
静岡県掛川市に本社のある「たこまん」という会社です。
「たこまん」は洋菓子のメーカー兼小売チェーン店です。
同社はカンブリア宮殿に
「地域密着の凄い会社」として登場するほど、
地元から愛されている会社です。
https://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/2016/0211/
この会社を見学させて頂いた時に、平松社長に
「採用は大変じゃないですか?」と質問したことがあります。
静岡はメーカーも多く、
特に新卒の高校生は取り合いだろうと思ったのです。
ところが 社長から帰ってきた答えは以外にも
「何の苦労もありません」。
理由は、親御さんの推薦でした。
小売チェーン店ということもあり、
地元ではよく知られた会社です。
しかも店員さんの接客が笑顔で丁寧で素晴らしいのです。
「買ったお客様が見えなくなるまでお見送りする」を
徹底してやっています。
よって地元の人たちは「たこまん」に対して
良いイメージを持っています。
そのため子供が「たこまん」を就職先として検討としていると、
親が「あそこはいいんじゃないか。
あそこに行くと礼儀正しい人間になる。
お前もそこでしっかり学んで働きなさい」と言うのです。
そうした親の後押しもあって、採用に苦労しないのです。
そこで、私のクライアントでも、親から
「いい会社だから、ここがいいんじゃないかな」と
言われるようことを目指しました。
まずは認証取得です。
いい会社かどうかは外から見て分かりません。
よっていい会社だというエビデンスを取る必要があります。
同社は「岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進企業に登録しました。
また市から「女性が働きやすい職場」としての認定を受けました。
この認定には階級があるのですが、
最上級の「AAAランク」の認定です。
また特別支援学校をサポートする
「働きたい!応援団 岐阜サポーター企業」にも登録をしました。
そして岐阜県労働局の「新はつらつ職場づくり宣言事業所」にも
登録しました。
この宣言は以下の5つを遵守すると伝えています。
1.サービス残業を発生させない
2.年次有給休暇の取得しやすい職場づくり
3.5Sや改善活動で やりがいのある職場を作る
4.若者就労支援のためインターンシップを実施
5.各種ハラスメントの根絶に努める
登録証には社長名と共に、社員代表の名前もあります。
労使が協力して職場づくりをしようという姿勢です。
こうした強い想いが共感を呼ぶのです。
次に、入社式の前後で新入生の
「関係欲求」を満たすことを実施しました。
関係欲求とは、「私は周囲の人に歓迎されている」
「仲間として認められている」という承認欲求や、
「私は周囲の人と上手くやっていきたい」と考える欲求です。
新人はとにかく「ここで上手くやっているか」不安を感じています。
が、上記のことが実感できると穏やかな気持ちになれるのです。
そこで、内定者が学校を卒業する時に会社から花束を贈ります。
共に人生の門出を喜ぶのです。
そして、入社式の時には、あらかじめ両親に書いていただいた
お手紙を読み上げます。
この手紙はサプライズです。
社会人になる子供に対するメッセージを
それまで育ててくれた両親から受け取った子供は、
この会社で頑張ろうという気になります。
入社式とは、それまで子供に対して責任を持っていたのが、
親から就職先の会社に変わる儀式でもあります。
その転換点であることを、こうした演出で伝えるのです。
さらに入社後は基本をしっかりマスターしていただくため、
OJT教育を行います。
従来、定着率が悪かった時は、このOJTが杜撰でした。
新人に何をどう教えるかは、現場の先輩に全て任されていました。
そのため、先輩によっては丁寧に教えることができず、
新人が放たらかしにされるなど雑なことが起きていました。
これでは辞めてしまうのも無理はありません。
そこでOJT計画書作り、いつまでに何をマスターしてもらうか、
本人はもちろん指導する先輩にも明確にしました。
そして、「成長の見える化シート」を作り、
自分が徐々に仕事ができるようになっていると
自覚できる環境を整えました。
そのことで新入生は、誰もが同じスキルを
短期間で身につけることができるようになりました。
人は誰しもできなかったことができるようになり、
人の役に立ちたいという「成長欲求」を持っています。
OJT計画書で、それを満たすことができたのです。
誰しもが持っている「関係欲求」と「成長欲求」を満たす。
そのための改革が実って、採用強化に繋がっているのです。
また、私の別のクライアントでは、
休暇や賃金などの「生存欲求」を満たすために
様々な工夫をしています。
その一つに、奨学金の支給制度があります。
同社の社員が30歳になるまでの間、毎年年度末に、
社員が払っている奨学金の返済分を
会社が支給するという制度です。
なぜそのような制度を設けたのか、社長が自身ブログで
丁寧に語っていますので是非お読みください。
採用に悩んでいる中小企業経営者にはきっと参考になるでしょう。
https://www.k-matsubara.co.jp/blog/boss/post-528/
人が採れなくて当たり前の時代です。
あなたの会社では「関係欲求」「成長欲求」そして
「生存欲求」の3大欲求を満たしていますか?
新人や親御さんの身になって考えて、実践していきましょう。