V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.495
by V字経営研究所 代表 酒井英之
「来年の方針づくりに役立つ社長の占いとは?」
今年も残すとこあと5日となりました。
あなたにとって今年はどんな年だったでしょうか?
そして来年はどんな年にしたいですか?
本メルマガの主な読者層は、
経営者や管理職など組織を率いている方です。
年末に来年の方針を立てる方は少なくないでしょう。
そこで、その一助になればと思い、
私がクライアントの未来を描くときに
参考にしている『占い』をお伝えします。
ご存知の方も多いと思いますが「春夏秋冬理論」です。
有名なマーケッターの神田昌典先生が、
来夢さんと組んで中小企業経営者に示したものです。
どんなものか、簡単に紹介しますね。
https://chamublog.com/seasons/
この占いでは、12年を1サイクルとして捉えます。
冬から始まり、3年ずつ4つの季節に分けます。
冬が3年、春が3年、夏が3年、秋が3年です。
冬は雪が降り、大地が凍てつく過酷なシーズンです。
が、雪の下では秋に落ちた種が、
じっくりと新しい根を伸ばしています。
来るべき春に備え、芽を出す準備をしているのです。
「花の咲かぬ日は、下へ下へと根を伸ばせ」
と言いますが、
冬はまさにそんな「次の始まり」のシーズンです。
これを企業の成長・発展に置き換えると、
新しい事業のアイデアが次々と湧いてくるときです。
そして「まず、やってみる」の精神で新しいことに挑戦し、
トライ&エラーを繰り返す時期です。
最初はなかなかうまくいかないでしょう。
が、改善を重ねるうちに勝ち筋が見えて、
そこから軌道に乗ります。
また、挑戦から生まれた副産物が、
思いがけず進化することもあります。
冬は試行錯誤の時期なのです。
次に春です。
春は雪解けとともに、地上に顔を出した芽が
ぐんぐん伸びる成長期です。
暖かい日差しの中で水分と栄養を吸収した植物は
予想を越えてどんどん伸びて行きます。
企業の成長・発展に置き換えれば、
冬の間に勝ち筋が見えたアイデアが、
事業としてどんどん伸びる時期です。
「これは!」と思ったビジネスに、
ヒト・モノ・カネ・時間を投下してPRすれば、
予想を超える顧客が集まり、評判となるでしょう。
その次が夏です。
夏は葉が生い茂り、美しい花が咲く季節です。
花の美しさと香りに、鳥や虫たちが集まって来ます。
暑さやスコールの中でも、怯むことなく輝きを放ちます。
企業の成長・発展に置き換えれば、
何をやってもうまくいく、ウハウハ状態になります。
ただしそれは経営者の実力ではありません。
需要と供給のバランスで、
たまたま需要が旺盛だからそうなっているだけです。
ただ、そのことに気がつかない経営者が大勢います。
自分の実力を過信し、事業をもっと伸ばそうとして
資金を調達し、事業にどんどん投資をします。
そのため事業は拡大しますが、借金も膨らみます。
その次は秋です。
虫や鳥たちは去り、植物は実をつけます。
その実は、多くの生き物の食糧になります。
その一部は地面に落ちます。
実は朽ちて種が残り、地中深く埋まっていきます。
その種が、雪降る頃に新しい根を生やすのです。
これを企業の成長・発展に置き換えれば、
夏の間に拡大したビジネスは
収穫の秋を迎えて、会社に大きな利益をもたらします。
が、それができるのは、夏の間に
収穫のための仕組みを作った会社だけです。
秋は夏に比べて需要が減退します。
そんな中、夏に一度買ってくれたお客様が、
リピーターとして定着し、
何度も購入してくれる仕組みが築けていれば、
需要減退の秋でも利益が出る体質になります。
逆に、事業を拡大しすぎた会社は、
需要減退とともに大きな借金が残る
いわゆるバブル崩壊状態になります。
その結果、撤退や事業売却など、
経営危機を招いてしまいます。
まるで、夏の過ごし方で秋以降が変わる
アリとキリギリスのイソップ物語のようですが、
それと同じことがビジネスの世界でも起きるのです。
さらにこの冬→春→夏→秋の流れは、
有名なボストンコンサルティンググループが提唱した
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)と
とてもよく似ています。
PPMでは事業を以下の4つに分けます。
一つ目が「問題児」です。試行錯誤の段階にある事業です。
この事業が数多く存在するのが理想です。
二つ目が「花形商品」です。ぐんぐん伸びている事業です。
この事業には積極的に投資をして伸ばします。
三つ目が「金のなる木」です。安定して稼げる事業です。
成長率の追求より、仕組化して生産性向上を図ります。
四つ目が「負け犬」です。衰退する不採算事業です。
過去の栄光に固執せず、早期撤退を図ります。
https://www.profuture.co.jp/mk/column/6149
春夏秋冬理論は、一つの事業が12年間で
PPMのように変遷していくと伝えています。
そしてどちらも夏(金のなる木)の事業の取り組み姿勢が
企業の成長・発展を左右すると警告を鳴らします。
よって、いま自分がどの季節にいて、
来年はどの季節の何年目を迎えるのかを理解することは
来年以降の方針を決める上でとても参考になるのです。
それについては以下のサイトで
あなたの誕生日や会社の創立日を入力すれば
出てきますので確かめてみてください。
来年の方針作りの参考になることを願っています。
(あなたの季節の判定)
https://hanteisite.com/kisetsu/
ちなみに私の来年は冬の3年目。
ここ数年続いた試行錯誤が終わり、
再来年訪れる春に備える1年です。
どんな出会いがあるのか今からとてもワクワクしています。
今年も大変お世話になりました。
「メルマガ読んでいますよ。いろんなメルマガ配信されますが
読んでいるのは酒井さんのだけです」
「めちゃ品質高いので、いつも共感します」
「導入から引き込まれて一気に読んでしまいます」
「自分が読むだけでなく、全社員に配信しています」
(たまに配信しない金曜日に)
「今週メルマガ来なかったです。
私、ちゃんと登録されいますか?」
など、忙しい中読んでくださるあなたの声は
コンサルタントとして大変な励みになります。
来年早々には500号を迎えます。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.494
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『社員の力で新しい歴史の扉を開く経営』
~新規ビジネスを生み出す4つの仕掛け~
サッカー日本代表、W杯では大活躍でしたね。
ドイツ、スペインという強豪国と同じグループで
まさかのトップ通過。新たな歴史を創りました。
選手にはただただ感謝しかありません。
コロナ禍から3年、
今、新たな歴史創りに挑む会社が増えています。
先日、某社で新規ビジネス案が発表されました。
同社は社員数100人未満のガス供給会社です。
その中から10人のメンバーが選ばれ、
彼らが、新規ビジネスの事業プランをゼロから考えたのです。
私はそのプロジェクトをお手伝いさせていただきました。
ミーティングの頻度は月に1回で計8回。
前半はアイデアを出すことに時間を使い、
後半はアイデアを絞り込み、
それをワクワクする事業プランへと進化させていきます。
今回は、最終的に4つの事業プランが示されました。
どれも魅力的で、メンバーはもちろん、
社長以下皆さんに喜んでいただきました。
私の新規ビジネス立案時の支援方針は、
「講師は、答えを言わない」です。
なぜなら、新規ビジネスの立ち上げは、
経営の中でも大変難しい仕事のひとつです。
その難局を乗り切るには、
担当者自身の高いモチベーションが必要です。
外部の誰かに言われてやるのであれば、
たとえそれがよく儲かる事業案だったとしても、
「なんで俺がこんなことやらなきゃいけないの?」
と考え、途中で放り出してしまうでしょう。
一方、自分で考えたプランなら、
「このプランを考えたのは自分だ。だから自分が絶対にやる!」
と、我慢と頑張りが効きます。
新規ビジネスの立ち上げは、意思が9割です。
その責任感と執念ために自分たちで考えてもらうのです。
また、一度自分でプランを生み出した経験があれば
それが自信となり、次は講師不在でもプランを創出できます。
その自信をつくるためにも、
講師は「場は作る。でも何も言わない」が良いのです。
とはいえ、日常業務で忙しいメンバーに
「新規ビジネスを考えてください!」と
言ったところで、アイデアは簡単には出てきません。
そこで、今回はいくつもの仕掛けをしました。
一つ目は、「ミッションステートメント」の策定と共有です。
メンバーの皆さんは、慣れない仕事に挑むのです。
「なぜ新規事業に取り組むのか」
「なぜ自分がやらなきゃいけないのか」
そのようなネガティブな気持ちが生まれて当然です。
そこで以下の「ミッションステートメント」を策定し、
毎回のミーティングの最初に読み合わせをしました。
「ガスのその先へ
電気もガスも自由に選べる時代
私たちにしか出来ないことは何だろう
その答えはきっと、私たちの中にある
誰よりもお客様を回り
誰よりも親身になって
誰よりも役に立ってきた。
日々の生活の中で、困っていること、悩んでいることを
一番知っているのは、私たちだから
くらしを丁寧に見つめると、
毎日あったら喜ばれるサービスは、まだまだたくさんあると思うから
お客様と話をしよう、アイデアを出そう、カタチにしよう
さあ行こう。ガスのその先へ。」
作者は、同社に顧問として長年深くかかわっている、
日本経営合理化協会のチーフディレクターの三木さんです。
同社をすぐそばでサポートしている三木さんだからこそ、
メンバーの心を一つにする
「ミッションステートメント」を示してくれました。
二つ目は、刺激を求めて2種類の見学会を実施したことです。
ひとつは、「東京ビッグサイトへの訪問」です。
ビッグサイトでは、毎週のように様々な展示会が開かれています。
その展示会にメンバーが2人1組で、代わる代わる見学に行きました。
展示会が行われる業界は、成長産業です。
少しでも自社に関連のありそうな展示会を2人1組で見学し、
自社に応用できそうな面白いネタを拾ってくるのです。
正直言って空振りに終わることもあります。
が、それは地域密着企業が外界を知る契機になります。
もうひとつは、3つの企業を見学したことです。
見学先は、「同社と同じ強い地元愛を持ち、
本業+新規ビジネスで成功している会社」で、
すべて上記の三木さんがコーディネートしてくれました。
見学先では、社長から新規ビジネス立ち上げの苦労話と、
それが会社にもたらした効果を語ってもらいました。
ナマ体験として成功者の「風圧」を感じることができたのは、
メンバーに大きな刺激・ヒント・勇気となりました。
三つ目は、「10倍スケールで考える」の実施です。
皆が考えたアイデアのうち、共感を得た数件を選び、
「そのアイデアのスケールを10倍にして考えるとどうなるか?」
を、全員で考えるのです。
売上は「客数×客単価×購入頻度」で表されます。
そこで、「客数が10倍に増えるとしたら?」
「客単価が10倍でも売れるとしたら?」
「購入頻度が10倍になるとしたら?」と問い、
アイデアをより魅力的なものに改善していくのです。
すると、アイデアがポケモンのキャラのように進化し、
大きくパワフルなものへと変貌するのです。
以上がアイデアを事業プラン化していくプロセスの工夫です。
が、今回はもうひとつ、社長自らがメンバーの為に用意した
仕掛けがありました。それは、最終プランの発表会に、
地元の信金の担当者を2名、招待したのです。
その狙いは
「金融機関から見て魅力的なプランかどうか?
土地を借りたい案件には、適地を紹介いただけるか?
事業立ち上げ時に、補助金申請が可能かどうか?」
等を問いかけるためです。
信金の担当者の発表会ご招待という仕掛けには、
社長の新規ビジネスプランに賭ける強い想いが
表現されていました。
こうして生まれた新規ビジネスのプランは、
当初全く想定しなかったものばかりで、私は大変驚きました。
当事者意識の高いメンバーが、一つのアイデアに
自社の強みと地域での存在価値を加味し、
未来を描いていく底力に感動しました。
そして、新規ビジネスを考えることは、
社員が持っている潜在能力を引き出し、
開花させる力があると、改めて気づきました。
コロナ禍になって、早3年。
どの業種でも規模を問わず、変化が加速度的に進んでいます。
変化を追うのでなく、自ら変化を起こす。
それができる会社と、そうでない会社の差はどんどん開いていきます。
あなたの会社は、新たな歴史創りに挑んでいますか?
社員の潜在能力を頼りに、
新しい景色を見てはいかがでしょうか?
弊社新規ビジネス創出コンサルはこちら。
https://vjiken.com/consulting/business.html
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.493
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『ゴリラに学ぶ、オンラインコミュニケーションの限界を打破する方法』
師走ですね。
最近、お会いする人に同じことを聞かれます。
「近頃はオンラインとリアル、どちらが多いですか?」
私の肌感覚では、コロナ前に比べると、
単なる「打ち合わせ」や「インタビュー」なら、
オンラインが圧倒的に増えました。
が、研修はほぼリアル開催です。
オンラインで実施するのは、大企業主催のものか、
多拠点の人が一斉に参加する学習会に限られます。
同じ会社の人が集まって学び議論する研修では、
リアルが圧倒的に多いです。
先日、私がメイン講師を務めた
第3期新聞経営革新塾が終わりました。
新聞経営革新塾は、その名の通り、新聞販売店を対象に、
自社のビジョンを考え、自らを変革していこうという塾です。
主催は「新聞通信社」という新聞販売店を対象にした業界紙で、
8月から毎月1回、計5回行われました。
参加者は、全国の新聞販売店の二世経営者約20名です。
参加者に参加目的を尋ねると、主に2つでした。
ひとつは、右肩下がりが続く業界の中で、
自分自身の希望となるビジョンを描くことです。
もうひとつは、人脈づくりです。
新聞販売店は朝日新聞の専売店や読売新聞の専売店など
系列に分かれています。ところが、この塾には
朝日新聞の販売店もいれば、読売新聞の販売店もいます。
同じ悩みを抱えている比較的歳の近い人たちが交流することで
今後色々と相談できる仲間を増やしたいと思っているのです。
この20名は全国から参加しますから、
第1回から第4回まではオンラインで開催しました。
1回3時間半の講義のうち、
40分程度、グループに分かれてディスカッションします。
メンバー同士は意見交換するので、
親しくなるチャンスはあります。
が、それだけだと人脈と呼べる関係にはなりません。
お互いに連絡を取って「何かあったら相談するよ」
という所までは行かないのです。
そこで、受講生が自分のビジョンを発表する最終回だけは、
オンラインでの受講を希望する人と
リアルに集まって受講したい人が選択できる
ハイブリッド型で開催しました。
その結果、約半数の人がリアルに参加しました。
また1期生、2期生のOBにも声をかけたところ、
大勢が参加してくれました。
そして、終了後には希望者だけで打上げ&懇親会を行いました。
この懇親会は、開放感や達成感に満ちた、
大変楽しい会になりました。
そして、参加した人たちは、今後お互いに連絡を取り合い、
何かあったら気軽に相談できる関係になったのです。
ここで一つ疑問が出てきます。
「なぜ人はリアルに会い、懇親会等に参加をすると
今まで以上に親しくなるか?」です。
このことについて、京都大学元総長で
霊長類の研究者として有名な山極壽一先生は
次のようにおっしゃっています。
ゴリラはお互いが同じ一族かどうかを
お互いを触り合う触覚とお尻の匂いを嗅ぐ嗅覚、
そして味覚を共有することで判断します。
このうち、味覚の共有は、食べ物を共有することです。
霊長類は、人間のように食べ物を分け合うことをしません。
食べ物等を食べる時は、最初にボス猿が食べます。
ボス猿は腹一杯になると、その場を離れます。
その残りを、他の猿が順番に食べていきます。
こうする事によって味覚を共有するのです。
その一方で、視覚や聴覚は、同じ一族かどうかを判断する上で
はほとんど使われないのです。
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001351.html
https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001350.html
これを人間に置き換えて考えると、
人を自分の仲間かどうかを判断する重要なポイントの一つが
触覚、嗅覚、味覚を共有できるかとなります。
そして、これらの感覚は、
オンラインでは共有できないものばかりです。
オンラインで共有できるのは、人が持つ5感のうち
視覚と聴覚のみ。だからなかなか親しくなれないのです。
ところが、上記のような宴会を開くと、
味覚もその場の匂いも共有できます。
さらに乾杯でグラスをカチンと合わせる触覚も共有します。
いわゆる同じ釜の飯を食う体験をすることで、
自分たちは仲間だという親近感を覚えるのです。
このことに関連し、別のコミュニティを
主催している人が興味深いことを教えてくれました。
その人はある勉強会のファシリテータをやっています。
ディスカッションのテーマはケーススタディで、
リアルで開催していた頃は毎回活発な意見が出る
楽しい勉強会でした。
が、昨年はオンラインで開催しました。
すると、同じケーススタディでも
メンバーがちっとも発言せず、
すっかり冷めた勉強会になってしまったというのです。
そこで今年は、ある工夫をしました。
ディスカッションそのものはオンラインなのですが、
この勉強会の初回に、受講生を一度リアルに集め、
懇親会を開催したのです。
すると、上記のケーススタディの時は、
リアルの開催時と同じぐらい様々な意見が出て、
大変に盛り上がったというのです。
一度懇親会を体験することで、
メンバーは「この仲間なら、自分が発言しても
否定されたり、無視されたりするようなリスクはない」という
心理的安全性を感じ、警戒心を解いたのです。
知識や情報の共有なら、オンラインで充分です。
が、そこに人脈作りのような「関係性の構築」が目的なら、
一度はリアル開催を加味した方が良いでしょう。
仮にコロナ禍がひどくなり、再び緊急事態宣言が出たとしても
オンライン化で対応するよりは、
可能であればコロナ終息まで待って、
リアルで開催した方が良いでしょう。
オンラインで何かと便利になった世の中ですが
リアルな出会いに勝るものなし。
そう感じる年末です。