V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.481
by V字経営研究所 代表 酒井英之
「硬直した組織内に『そよ風』を吹かすには」
ちょっと前の話になりますが、今月8日に
オリビア・ニュートン=ジョンさんが亡くなりましたね。
彼女のことを直接知らない人でも、
彼女の歌は聞いたことがあるのではないかと思います。
特に『そよ風の誘惑』は名曲ですよね。
ちょっと、その歌詞を見てみましょう。
https://www.youtube.com/watch?v=1B2_Vyvazts
http://neverendingmusic.blog.jp/archives/16216885.html
私はこの歌詞に組織活性化のヒントがあると思っています。
この歌詞を見ると、
イライラして焦っている友達あるいは息子・娘に対し、
「私にもそんな時期があったよ。
イラつく気持ちはわかるよ。
でもあなたには、少し落ち着いて欲しいの。
こんな気持ちになったことはないかしら?」
と、問いかけています。
この問いかけ方の優しさは、とても素敵ですね。
私がこの曲を初めて聴いたのは高校時代ですが、
今でもこの曲を聴くと優しい気持ちになります。
仕事にイラつき、焦っている部下に対して
上司があれこれアドバイスをする前に、
こんな問いかけをしたらどうでしょう?
きっとその部下は、そよ風に吹かれたように
落ち着きを取り戻し、本来の笑顔取り戻すでしょう。
それには上司が意識して、
以下の3つのことに取り組む必要があります。
名付けて「職場にそよ風を吹かす3STEP」です。
STEP1は、「観察」です。
上司が部下をよく観察し、
イラついて焦って表情が険しくなっている等
変化に気づかないと、声をかけることはできません。
ところが、こうした変化に気づけない上司がいます。
プレイングマネージャーの上司です。
自分のプレーが忙しくて、余裕がなく、
部下の態度から察することができないのです。
トヨタでは、監督者は作業をしてはいけないルールがあります。
監督者は作業すると、作業者を見守ることができず、
安全管理上の問題や作業ミスを看過してしまうからです。
ギリギリの社員で回している中小企業に
このルールを適用するのは難しいかもしれません。
が、「注意深く一人ひとりを観察することが
自分の重要な仕事だ」と自覚させる必要があります。
それには「上司は毎日必ず1回は声がけをする」
「若い社員には、バディ(兄貴役)をつけて、
仕事の話でなくてもいいので、毎日雑談をする」
などのルールを作るといいでしょう。
特に部下への声がけは「心がけること」ではなく
「超重要な仕事」だと思って取り組ことが大切です。
私は管理職研修で声がけこそ
モチベーションを高めると指導しています。
本人が頑張って仕事に取り組んでいる姿を見て、
「いいね!」とか「すごいな!」などと
フィードバックすることがやる気に繋がるからです。
STEP2は相手の話を「聴く」です。
聴かない限り、「私もあなたみたいだった」と共感できません。
聴くためには、まずは関係構築です。
STEP1で示した声がけを行い、
日頃から適切なフィードバックを返すことで
「この人には本音を言っても良さそうだ」と
思われる関係を作ります。
これがないまま個別面談をすると、
質問しても無言…が増えてしまいます。
次に、聴く時間を確保します。
イラついたり焦ったりしている原因を聴くわけですから
しっかり話せる時間を、最低30分は確保しましょう。
そして経緯について尋ねます。
是非良い質問をしてくださいね。
「なぜ、最近イライラしているの?」と尋ねるのと
「わたし、あなたを見ていて最近ちょっと心配なの。
イライラしているように見えるけど大丈夫?」
と聴くのでは、答える方の印象も違ってきます。
前者は主語が「あなた」の You messageです。
後半は主語が「わたし」の I messageです。
主語が「あなた」は矢印が相手に直接に向いてしまいます。
「なぜ?」と尋ねているだけですが、
「なぜそうなるのか?」「なぜできないのか?」のように、
質問される側には、自分が否定されたり、
尋問されているように感じられます。
『その風の誘惑』の歌詞は
I message の質問と自己開示で構成されています。
それがこの歌が、聴く人にやさしく響く理由です。
STEP3は、その「自己開示」です。
「自分もそうだった」と伝えることは
自分の弱さを隠さず語るということです。
上司の中には「部下から尊敬されなきゃいけない」と考え
自分の武勇伝を語ったり、
部下と競争して「俺の方が上だ」と誇示する人がいますが
「すごい人」には誰も気後れします。
その結果、部下との距離が開いてしまいます。
逆に上司が失敗談を語ると、
部下は「この人でもこんな失敗をするんだ」と、
親近感を感じます。
そして安心感して自分の悩みを相談してくれます。
部下の話を聴きながら、
私もそうだったと感じたところは
どんどん素直に語りましょう。
以上の3STEPは、お気づきの人も多いと思いますが、
実はコーチングの基本です。
上司に限らず、全社員がこのような聴くチカラを身につけると、
会社全体が穏やかになり、心理的安全性が高まります。
そして、言いたいことが言いたい人に直接言えるようになり、
クリエイティブになっていきます。
コーチングは日本に上陸して20年以上になるスキルですが、
子供の頃から学校や学習塾、部活等で
コーチングを受けてきたミレニアル世代や
Z 世代が企業の重要な人材となっている今、
上司に必須のスキルと言えるでしょう。
是非、組織的に学んでみてはいかがでしょうか。
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.480
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『経営者のモチベーションを維持する方法とは?』
経営者からしばしば
「酒井さん、社員のモチベーションを高める方法は
わかりましたが、自分のモチベーションを
どうやって維持したらいいのでしょう?
心が折れそうなことの連続です…」という質問を頂戴します。
今回は、それにお応えしたいと思います。
私の事務所には、昨年23回忌を終えた
父の若い頃の写真が飾ってあります。
中小企業の事務所に創業者の写真が飾られているのを
しばしば見かけますが、あんな感じです。
父は「相互銀行」の行員でした。
相互銀行は、従業員300人以下もしくは
資本金8億円以下の中小企業または
個人事業者にしか融資できない金融機関です。
営業畑の出身で、4支店の支店長を務めました。
その後本社でシステム部の責任者を務めましたが、
余程お客様を相手にする現場が好きだったのでしょう。
「本部の仕事はつまらない」と
ぼやいていたのをよく覚えています。
父は定年直後の62歳で他界しました。
私は喪主を務めましたが、ある中小企業経営者が
葬儀に参列してくださいました。
その人は、父と同い歳の創業者でした。
父が30歳そこそこの時に出会い、
融資してもらったと言います。
おそらくこの社長のために、
父は本部に掛け合うなど、相当努力したのでしょう。
その会社は、今は随分大きくなりましたが、
今でも父の銀行(現在は地銀)がメインバンクです。
その人は、葬儀に一人で来ませんでした。
同社の後継者である息子さんを伴ってきました。
そして祭壇に手を合わせて父の遺影を見ながら、
「よう見ておけよ。今のわが社があるは、この人のおかげや」と、
その息子さんに言ってくださいました。
それを聴きながら、二代にわたって感謝が続くとは、
「何と尊い仕事をした人なのか」と感心しました。
そういう経験があるので、
私は創業者ですが、父の志を継ぐ二世経営者の気持ちです。
父の志は聞いたことありませんが、
中小企業支援こそが生きがいだったと思います。
私の志は「暗夜に一燈を灯す」です。
なかなか先の見えない時代です。
不穏な事件が次から次々発生します。
が、そんな環境下でも、
「とにかくこれに向けて頑張ろう」と言える希望が一つあれば、
ぶれることなく前に進んでいけると思うからです。
先日、ビジョンづくりをお手伝いさせていただいた
30代の後継者が、同社の社内報に
次のようなことを書いていました。
(引用ここから)
「経営ビジョンにもありますが、
これからはワクワクというキーワードを
どんどん使っていきたいなと思います。
何をするにもワクワクすることを、
みなさんと共有していきたいです。
先日みなさんに工場の未来構想図を発表したと思います。
それを見てみなさんはどう思いましたか?
少しだけでもワクワクしてもらえましたか?
私は構想を打ちあわせしている時も、
みなさんに発表する時も、
ずっとワクワクしていました。
どんな工場にしようかとか、
発表したらみんながどんな反応するかな?とか
ずっとワクワクしていました。
私自身ワクワクを実感し思ったことは、
ワクワクを感じると、そのワクワクに向けて
頑張ろうという気持ちが強く湧いてきました。
未来構想図を早く実現したいですから!
ぜひみなさんにも私と同じ気持ちを感じてもらいたいです。
(中略)
しかし、私一人の力では
そんな会社は作っていけないと思っています。
みなさん、出来れば今回話をした箏に共感いただいて
私と一緒にみんなで盛り上げていける
会社にしていきたいです!
みんなでワクワクする自慢の会社を作って行きましょう!」
(引用ここまで)
これを読んで私はとても嬉しくなりました。
同社の場合、たった一枚の「未来構造図」があるだけで、
それが後継者のモチベーションになるだけでなく
社員全体のモチベーションになり、一体感を高めます。
そして、足元で起きる様々な出来事に躓きながらも
方向性を見失うことなく乗り越えていけるからです。
今月、別の中小企業2社で、
ビジョンづくりのコンサルティングがスタートしました。
どちらの会社もコロナ禍やウクライナ紛争など、
終わりの見えない外部環境変化に企業は巻き込まれています。
例えるなら台風による荒波に、
巻き込まれた小舟のような状態です。
そのような危機を乗り越え、
サスティナブルな経営ができるのは、
ぶれない軸を明確に持った企業だけです。
古来より船乗りたちは、
常に北極星を見て自分の現在地を確認し、
進路を確かめながら航海しました。
そして、幾多の苦難を乗り越えながら
目的の地に辿り着きました。
そのような北極星(ぶれない軸)が、
企業を率いる経営者と幹部に、
今ほど必要とされた時代はありません。
しかもその軸は、社員の誰もが「自分たちのビジョン」として、
誇りをもって共有できるものでないといけません。
そうしたビジョンづくりを支援できることは
資金を融資した父とは支援の仕方こそ違うものの、
志を継いだと考えています。
もし、オフィスに創業者の写真が掲示されているのなら、
その人の志が何だったのか想いを馳せてみましょう。
まだご存命なら、何がしたくて始めたのか、
何が一番の働き甲斐だったのか、直接尋ねてみましょう。
それを素直に受け取り、
「そうすることが当たり前」と考えれば、
精神的に随分楽になります。
そして、今の時代にふさわしい北極星を描きましょう。
それがあれば、心が折れそうな時でも、
経営者としてのモチベーションを
維持することができるでしょう。
<ご子息・ご息女を後継者にしたい方に>
・子供が修行先から帰ってきた。経営者の視点を身に着けたい
・現場修行中の子供に後を継ぐ者としての覚悟をつくりたい
・後継者の勉強をさせたいが有名後継者塾に通わせるには時期尚早
などのご要望をよくいただきます。
ファミリービジネスにおいては、
後継者育成は、いつの時代も待ったなしの課題です。
そこで弊社では昨年度から、
ファミリービジネスの後継者のための
『若鷹経営塾』を開塾しています。
詳しい内容は以下の通りです。
https://peraichi.com/landing_pages/view/t5xb5
興味がおありの方は、ぜひ以下の日時に行われる
プレセミナーにご参加ください。
9月22日(木) 15:30~17:00
10月7日(金) 10:00~11:30
(どちらも同じ内容です)