V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.464
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『新人の定着率を上げる3つのスキルとは?』
新人が入ってくる時期ですね。
近年は新卒を採用しても、
3年以内に1/3が辞めてしまうと言われています。
が、次々と辞められては、
採用難の時代、企業にとっては大損失です。
そこで今号では、新入社員に当社を好きになってもらい、
共に歩む仲間になってもらえるよう、
1年生のうちに磨いておきたい3つのスキルと
その身に着け方をお伝えします。
3つのスキルとは、以下です。
・目的思考=「何のため、誰のため」を考える力
・逆算思考=「ゴールから逆算して」仕事を組み立てる力
・受手思考=「伝える力」と「相手の立場に立つ力」
では、どうしたらそれらが身に着くのか見ていきましょう。
第一の「目的思考」の大切さは、言うまでもないでしょう。
どの仕事にも「何のためにこれをするの?」という目的があります。
また「いつまでにどれだけ」という目標値もあれば
「どのようにやればいいのか」という決められた手段があります。
このうち、大切なのは「目的」です。
目的を果たすのであれば、今の手段に固執する必要がありません。
より良い方法があるのなら、どんどん変えてもいいのです。
そこで、目的の大切さを学ぶ研修を行います。
最初ですから、会社の中で最も大きな目的をテーマに
考えてもらうと良いでしょう
それは、「なぜ当社が今、この事業をやっているのか?」
その誕生の経緯を調べることです。
どの会社にも、創業当時、この事業を始めたきっかけがあります。
さらに、歴史の中で現在の主力事業が生まれたきっかけがあります。
当時の経営者が明確な目的をもって始めたはずです。
そしてその多くは、「困っている人たちの役に立ちたい」という
公欲から始まっているはずです。
それについて、資料をひもといたり、
経営層の話を聞いて、新入社員がまとめて発表するのです。
その過程で、以下の三つについて気づくようにします。
【1】業種肯定感
この業種が、社会にとって欠かせないものだという認識を深めます。
その中で、当社が独特のポジションを築いていること認識します。
【2】自社肯定感
当社が、独特のポジションを築いている理由を認識します。
独自の技術があるのなら、その技術力が生まれた経緯を認識します。
お客様に恵まれているのであれば、
なぜそのようにご愛顧いただいているのかも認識します。
【3】若手社員肯定感
当社が若手社員の力を信じ、若いうちから様々な仕事を
任せてくれるチャンスの多い会社だと認識します。
新入社員はその事実を知り、自分の未来にワクワクします。
こうしたことを、経営者が語って聞かせるだけではなく、
自分たちで資料を読んだり、
先輩にインタビューして調べて発表する。
そんな機会を作っていただくとよいでしょう。
第二は、逆算思考です。
逆算思考は、理想のゴールを描く力と、
そのために計画を立案する力から成り立ちます。
そこでまずは、ゴールを描く力を養います。
例えば、当社の今の採用のホームページの有り様が
これで良いのかどうか議論していただきます。
新人は多くの会社の採用のホームページを見てきているので、
当社の良い点も悪い点も見えているはずです。
そこで当社の理想のホームページの姿を
アウトプットしてもらいます。
すると今、発信されてない当社内の様々な情報が見えてきます。
この気付きは、今後の採用に力を入れたい当社にとって、
多くのヒントになるでしょう。
第3は受手思考です
特に「伝える力」は大事です。
プレゼンテーション能力はこれからのビジネスに必須です。
とりわけ、海外との取引を強化したい会社や、
異業種とのコラボで付加価値を高めたい会社には
プレゼンテーション力の有無が
コミュニケーション能力そのものになります。
よってプレゼンテーションの基礎を学んだ上で、
上記の「目的思考」や「逆算思考」を高めるために
調べたり研究したりした内容を
プレゼンテーション形式でアウトプットしてもらいます。
聴き手は、社長以下、役員・部長クラスです。
社長が新人の発表を聴き、ポジティブな評価をすることで
新入社員たちのモチベーションは高まります。
またこのような機会があることで、
教育の担当者も責任を持って育てることになります。
以上、三つのスキルの身に付け方を簡単にお伝えしました。が、
半日ほど会社説明をして、
午後から現場に配属して OJT を行う従来のやり方では
どうしても定着率は悪くなります。
新人たちにしてみて「自分たちは期待されている」
「何か面白いことが出来そう」という実感がわかないからです。
これまで人事のサイクルは
「採用ー育成ー評価ー処遇」と言われて行きましたが
今日では「採用ー育成ー定着ー評価ー処遇」の
サイクルが欠かせません。定着が重要なキーなのです。
そのために大切なことは、
1on1面談と、最初の教育です。
教育をしっかり行うことが、新人たちの若手肯定感を高めます。
ぜひ取り組んでくださいね。
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.463
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『もし、原晋監督が関東学生連合を率いたら?』
「関東学生連合」をご存知でしょうか?
箱根駅伝ファンなら
誰もが知っているチームの名前です。
このチームは、箱根に出場できなかった
大学の選手のうち、予選会の個人成績が
上位16名(各校1名限)で構成される、
いわゆる寄せ集めのチームです。
箱根駅伝の予選会は、毎年10月の半ばに行われます。
その結果で、関東学生連合のメンバーが決まります。
よって、実質チームで練習できる期間は
2か月ほどしかありません。
しかも、全員違う大学の学生ですから、
一緒に練習することもままなりません。
よって、2018年以降の順位は
20位、21位、21位、19位、20位。
毎回、ほぼ最下位です。
出場する選手も、
「チームのために」ではなく「自分のために」走る。
ゆえに、この成績も頷けます。
そんな、この関東学生連合が、
一度だけ、異常に輝いた年があります。
それは2008年。
なんと総合4位になったのです。
(往路4位、復路4位)
https://number.bunshun.jp/articles/-/846456
なぜ2008年だけ、そんな好成績が出せたのでしょうか?
その秘密は、監督にありました。
その時の関東学連選抜(現・関東学生連合)の監督は、
現・青山学院大学監督の原晋さんでした。
原監督が、いわゆる「原マジック」を使って
寄せ集め集団を、歴代最強チームに変えたのです。
そこで今号は、先週の『金スマ』で特集していた
ONEチームを創る「3つの原マジック」をお伝えします。
「原マジックその1」は「目標を自分たちで決める」です。
原監督は、関東学連選抜の選手を招集し、
ミーティングを開きました。そして選手に尋ねました。
「君たちは箱根でどんな成績を出したいのか?」
これには選手たちは驚きました。
これまで、監督が「〇〇を目指せ!」と言って、
「はい!」と答えてきた人ばかりです。
自主目標を立てたことなどないのです。
それを原監督は皆に考えさせました。
言われてやるよりも自分たちで目標を設定した方が
当事者意識が強くなり、主体性を発揮すると考えたのです。
その時、原監督はチームを少人数のグループに分け、
ディスカッションさせました。
大勢でミーティングすると、
どうしても発言しない人が出て、当事者意識が薄れます。
原監督はそれを避けるために
「少人数でミーティングを開催」しました。
これが「原マジックその2」です。
ミーティングの結果、選手たちは
「3位以内」という自主目標を設定しました。
この大会まで関東学連選抜は16、18、19、20位です。
その実績を考えれば、3位など荒唐無稽です。
が、原監督はこの目標を笑いませんでした。
選手たちのポテンシャルを信じていたのです。
そして「自分の役目はこの目標の実現を支援することだ」と
選手たちに約束したのです。
「原マジックその3」は、
チーム名を選手に考えさせたことでした。
この時も選手は、少人数のチームに分かれて議論しました。
そして、自分たちで「JKH-SMART」という
チーム名を考案しました。
ジャパンのJ、関東学連のK、箱根のH。
それと参加した大学の頭文字から作成しました。
「名は体を表す」というように、
自分たちのチームに名前が付くと、そこに魂が宿ります。
これによって、メンバーの一人ひとりの、
「チームのために走る」という責任感が強くなったのです。
その成果が、歴代最高の4位だったのです。
この「3つの原マジック」を観ながら、
弊社が行っているV字回復メソッドと同じだと思いました。
一体感を高め、成果を出す方法は、
経営でもスポーツでも同じなのです。
その一例を紹介します。
弊社は、この1~3月で、社員数300人近い組織の
中期ビジョンの策定を支援しました。
この組織は、幹部社員だけで14名います。
毎回の計5回行ったミーティングは、
14人の幹部全員が参加して行いました。
弊社のビジョン開発は、必ず調査から始まります。
この調査は、「自分たちで」担当してもらいます。
数人単位に分かれて現場インタビュー等の調査をし、
調査結果を読み解き、組織の課題を抽出します。
その課題を統合して、
「自分たちで」ビジョンを創っていきます。
時には現場のリーダークラスも巻き込んで、
ディスカッションを重ねました。
ディスカッションは1G当たり3~5人に
分かれて行います。少人数化することにより、
各自の発言量は増え、地位の上下関係は薄まります。
ここが「原マジック2」と符合します。
こうして3月初旬に、
ビジョンを「自分たちで」策定しました。
それは誰からの押し付けでない、
自分たちで実現したい納得度の高い自主目標です。
自分たちで目標設定させると、
無難な目標になるのではないかと危惧する人がいますが
そんなことはありません。
実績のない関東学連選抜が3位以内を夢見たように、
人は自分が所属している組織の一体感が高まると、
その力を信じ、内面から意欲が沸いてくるのです。
これが「原マジック1」と同じです。
ビジョンができたら、
自分たちの変化を表すスローガンを創ります。
これが「原マジック3」に当たります。
志を同じくする人が集まる「旗印」を創ったのです。
今回のクライアントが来期、
2008年の関東学連選抜並みの好成績を
残すかどうかはこれからです。
が、私はそうなるものだと信じています。
なぜなら、そこにいる人たちの顔つきが
明らかに変わったからです。
不安のない、決意を秘めた時にできる
前だけを向いた、いい顔です。
組織の一体感を創る「3つの原マジック」。
どれもすぐにできることばかりです。
あなたも実践してみてはいかがでしょうか?
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.462
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『2-6-2のどの人財を育成すれば組織は成長するのか?』
年度末ですね。
弊社には来期の人材育成計画の相談が
いくつも届いています。
その中で最も多いのが、
「社員が2-6―2に分かれているが、
全体の組織力を上げるには、
どの層に力を入れるべきか?」という相談です。
こうしたご相談をいただく社内には
「会社の業績を考えれば、
トップ2割を伸ばした方が良いのではないか?」という意見と、
「いや、ボトム2割に力を入れ、
全体の底上げを図った方が良いのではないか?」
という意見があります。
あなたが教育担当の責任者なら、
どの層に力を入れるでしょうか?
コンサルタントを30年以上やってますと、
どこに力を入れば組織全体がグッと成長するか、
その「押しボタン」が見えてきます。
今回はそれがどこにあるかをお伝えします。
まずトップ2割ですが、ここに力を入れると
確かに会社の業績は一時的に伸びます。
が、デメリットが2つあります。
第1はトップ2割に続くミドル6割との実力差が
開きすぎることです。
すると、ミドル6割の成長が止まってしまい、
社内は「これしかできない」単能工があふれ、
思うような配置転換、異動ができなくなってしまいます。
その結果、トップ2割への業績依存度が高くなり、
彼らの活躍の限界が組織の成長の限界化し
安定して長く成長することはできません。
第2は、成長したトップ2割がそれ以外の人に、
「なんだ君、こんなこともできないのか」と
高圧的な態度をとるということです。
全ての人がそうなるとは限りませんが、
トップ2割の当たりのキツさは、
他の人のモチベーションを下げ、
結果的に組織全体が沈んでしまいます。
次に、全体の底上げに向けて
ボトム2 割に注力するという考えですが、
これもあまり得策ではありません。
この2割には、一般的に2種類の人がいます。
一つは 「不燃人」と言われる人で、
どれだけ励ましても一向に心に火が点かない人です。
不燃人はどんな組織にも出現します。
組織が一体感を持って突き進む時、
一種のカルト教団のような心理状態になります。
するとこの雰囲気を嫌い、
「これはちょっと危険だぞ。自分だけは冷静でいよう」と
感じて、無意識的に不燃であることを選択するのです。
もう一つが、「消燃人」と呼ばれる人です。
この人は、ネガティブな発言をして、
周囲の人のやる気の火を消してしまう人です。
誰かが頑張ろうとすると
「どうせできっこないから、やめたほうがいいよ」
「以前同じことをやってみたけど、上手くいかなかったので
今度もうまくいくはずがないさ」などという人です。
人は誰しも、自分なりのセルフイメージを持っています。
そして、日々自分のセルフメージに合わせて行動します。
例えば、アグレッシブなイメージを持っている人は
常に自分をアグレッシブな状態にしようとします。
また、慎重に物事を考えるイメージを持っている人は、
常に慎重に物事を考えようとします。
それと同じで、自分に卑屈なイメージを持っている人は、
常に卑屈であろうとします。
消燃人はそういう人ですから、
このイメージを壊さない限り火が点かないのです。
よって注力すべきはミドル6割になります。
その6割を「中の上」「中の中」「中の下」のように3層に分けます。
そして、全体のレベルアップを図るために、
「中の上」に注力して育てるようにします。
ミドル層の彼らにとって、
トップ2割は、仕事ができて当たり前です。
「彼らは特別だから。我々とはできが違うから」と考え、
どれだけ活躍しようが、自分もああなりたいとは思いません。
ところが、同じミドル層が成長すると違います。
中の上が伸びると、一番驚くのは中の中と中の下です。
中の上が頑張り、トップ2割に追いつき始めると、
「あれ?何であいつ最近頑張ってるのかな?」と意識します。
そして、それが偶然ではなく実力によるものだとわかると
「自分が置いてかれるのでは」と思い、焦り始めます。
そして、中の中と中の下が、
自分達もレベルアップしようと意識し、
勉強会などに積極的に参加します。
こうしてミドル6割はワンランク上のレベルにアップします。
また、トップ2割は中の上が追いかけてくると
わかると黙ってはいません。
自分達は常にトップであり続けたいので、
自主的に学習して、スキルアップを図ります。
その結果、トップ2割もワンランク、レベルアップします。
こうして中の上が成長すると、トップ2割も
ミドル6割もワンランク上のレベルへとアップします。
ボトムの2割は変わりませんが、
全体の8割が成長するので、組織としての成長するのです。
よってどこの育成に注力するのかといえば、
中の上クラスとなります。
中の上クラスが、あなたの会社の
組織力向上の「押しボタン」なのです。
なお、社員が少なく分けて開催することが難しい会社では、
全員が公平に研修を受講する形式が取られます。
このときは、ファシリテーションのやり方に注意します。
トップ2割ばかりが発言し、
ミドル以下が発言しないようでは、
双方のモチベーションを下げてしまいます。
皆が自由に発言できる環境はどう創ればいいのか、
そんなディスカッションの仕方は
このメルマガで、また紹介します。お楽しみに!