V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.452
by V字経営研究所 代表 酒井英之
「生産性向上を実現する2つの『考具』とは?」
最近、スーパーに行くとセルフレジが多数並んでいますね。
お客様は自分で買いたい商品のバーコードを機械に読ませ、
自分で袋詰めをして買っています。
私も最近店員さんに教えて貰い、やっとできるようになりました。
「ちぇ、あっちの列の方が早かったな!」などと考えながら
レジ前の長い列に並んでいたのが、遠い昔のようです。
こうしたレジの無人化は、流通業界にとって大きな課題でした。
5年前の2016年、パナソニックは無人レジを開発し、
ローソンで実験しています。
この実験は、特別な買い物かごの中に買いたい商品を入れると、
機械がそれを読み取り、袋詰めもしてくれる画期的なものでした。
しかしながら、普及することはありませんでした。
https://www.youtube.com/watch?v=mtA2T1G58zs
この時、パナソニックが取り組んだのは、
人間がやっていることをそのまま機械化することでした。
だから全自動レジです。
それに対し、現在普及しているセルフレジは、
レジの担当者の「バーコード読み」「お金の出し入れ」
「袋詰め」の仕事を、全てお客様にやってもらいます。
だからセルフレジなのです。
ただし、このセルフレジもそのうち姿を消すかもしれません。
ご存知のように Amazon GO はレジが全くないお店です。
店内に置かれたカメラで、その人が何を買ったかを追い、
出口を通った時に、自動で会計できるのです。
https://www.youtube.com/watch?v=BLTS3VqphHE
この仕組みが日本に日本の常識になる日も近いかもしれません。
https://www.mrt.mirait.co.jp/miraiz/newsflash/article005.html
中小企業の経営者と話していますと、
次のような嘆きをよく聞きます。
「付加価値を上げようとしたら、短納期や無人化など
難しい仕事に取り組むしかない。
にもかかわらず、残業はさせられない。
どのようにして付加価値を上げればいいんだ…?」
こうした悩みに、上記のレジの進化が
ヒントになるのではないかと思います。
そこで今回は、2つの考える道具=「考具」を紹介します。
第1は無人化のための考具です。
その第一の問いは「そもそもそれは必要か?」です。
この時の選択肢は2つです。
回答1.なくせるとしたら、どうしたらいいか?
回答2.やはり必要だとしたら、どうしたら効率化できるか?
このとき、回答1を選んだのは Amazon GO(案1)です。
一方、回答2を選んだのは、パナソニックの自動レジ(案2)と
セルフレジ(案3)でした。
レジはなくせないが、レジの担当者をなくすことを考えたのです。
次に、上記回答のために「最低限必要なことは何か?」を考えます。
この時の選択肢も二つです。
回答3.それを満たすために、機械にできることは何か?
回答4.それを満たすために最低限、人手をかけるべき点は何か?
回答1を実現するためにAmazon GO は、
多数のカメラと AI でそれを実現しました。
Panasonic は全て自動機でやろうとしました。
これに対しセルフレジは、人手の部分を、
お客様に負担してもらうことを考えました。
こうして生まれた三つのレジのうち、費用対効果の観点から
現在わが国では、セルフレジが普及しているのです。
第2は、スピードアップのための「考具」です。
これは、社員が自分たちで仕事のムダ取りを行い、
スピードアップを考える方法です。
浜松市にある沢根スプリング株式会社は、「日本でいちばん
大切にしたい会社大賞中小企業庁長官賞」を受賞した会社です。
この会社は社名の通りバネのメーカーですが、
自社のミッションを「世界最速工場」と位置づけています。
「バネが壊れて機械が動かない」お客様には、
大急ぎでバネをお届けしなければなりません。
そのため、納品スピードが大きな付加価値になるのです。
お客様には「問い合わせへの返答は2時間以内」
「少量・小口品を3日で発送」を約束しています。
だからといって、社員は残業しているわけではありません。
同社の社員の平均残業時間は月5時間以内です。
有給取得率も80%を超えています。
なぜこんなことができるのか。
その理由の一つが、社員にスピードアップの方法を教え、
自分で考える機会を作っていることです。
以下は同社のスピードアップの「あるべき姿」です。
1 速さの価値を知る
2 やるべきことを徹底的に減らす
3 期限を決める
4 60~80%で最短でカタチにする
5 他人に公開する
6 コミュニケーションは質より量(短時間多頻度)
7 当たり前を徹底する
8 得意な人に任せる
多くの会社では「改善しろ」とは言います。
が、具体的な数字の基準や考え方は示していません。
同社のように、2時間以内の返答や
3日で発想という数字の基準があるだけで、
社員は自分の仕事に〇か?を付けることができます。
そして上記のような「8つのあるべき姿」が示されているので、
何が出来ているからうまく行ったのか、
何ができていないからうまくいかなかったのかを自分で考え、
改善することができます。
つまり、この8つは自分で考える「考具」なのです。
逆に言うと「考具」がないと、
社員の主体性を引き出すことができないのです。
時短の実現は上司が考えて指示命令するしかありません。
しかし、言い方ひとつで動かなくなるのが社員です。
結局、生産性向上は実現しないことになります。
あなたの会社の生産性向上への取り組みはいかがでしょうか?
短時間化を実現しない限り、新しい人は入ってきません。
コロナが収まっている間に、
様々な展示会や勉強会に顔を出し、
自社に必要な「考具」を見つけてくださいね。
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.451
by V字経営研究所 代表 酒井英之
「あなたの会社が倒産するのはどんなとき?」
政府が過去最大の財政支出を出す方針ですね。
企業の倒産を避けるために、必死になっています。
そこで問題です。
「あなたの会社が、
顧客に見限られ倒産するケースを3つ想定してください。
そして、なぜそのような事態になってしまったのか
原因を考えてください。
また、そのような事態を避けるために
あなたとあなたの部署にできることは何でしょうか?
レポートに書いて提出してください」
実はこれ、私があるメーカーの
管理職研修で出した課題です。
皆さんや皆さんの会社の管理職であれば、
上記の問いを自分の会社に置き換えて
どのように回答するでしょうか?
このメーカーでは、顧客から見限られ、
倒産する要因として次のような回答がえられました
・納期遅延多発
・品質不良多発
・特定のお客様を優先しすぎて他のお客様と疎遠になる
・革新が止まりコモディティ化する
・コンプライアンス遵守違反
この問いを私が出した意図は二つあります
一つは、社内で発生する問題に対して管理職の皆さんに
当事者意識を強く意識してもらうことです。
例えば、納期遅れが発生したら、その原因は
受注から出荷までの流れの中で、
どこがボトルネックになったかを、検証する必要があります。
検証するときは、営業・設計・製作・検査・出荷までの
すべてのセクションからリーダーが集まって、
課題を特定しないといけません。
「自分のところはちゃんとやっている。
前後を担った他部署いけないんだ」と、部署間で
責任を押し付け合うようでは問題は解決しません。
それよりも関係部署のリーダーは集まって、
1時間でもこの問題について発生原因と対策を話し合うことです。
そのような会議を開催すると、問題が一気に解決します。
責任のなすりつけ合いではなく、一緒に考えること。
コミュニケーションを怠らず、
相手が他部署でも、部下でも、お客様でも
まず相手を理解してから、自分を理解してもらうように努めること。
そのことを意識してもらうためにこの問いを投げています。
もう一つは、 管理職の皆さんに経営はシステムだと
気づいてもらうためです。
それを図に表すと以下になります。
①経営理念:社員を幸せにする。世の中の社会的課題を解決する等
↓
②ビジョン:〇年後のありたい姿
↓
③戦 略:どの事業にヒト・モノ・カネを集中するのか
↓
④戦術・計画:いつまでに何をするのか
↓
⑤日々の行動:計画に従って行動・働きやすい環境を整備
↓
⑥予算実績対比:予定とのズレを確認
↓
⑦評 価:頑張った人を評価する。模範とし指導者にする
↑
⑧行動指針:当社の社員はかくあるべき
会社が倒産するということは、
上記の①~⑧のシステムのどこかが滞る、
あるいは抜け落ちてしまい、回らなくなってしまうということです。
納期遅延や品質不良、コンプラ違反が多発するということは
数字ばかりを追い求めて、①や②を忘れた結果かもしれません。
また、⑥がおざなりになっていわゆる「どんぶり勘定」になっていたり、
⑧が徹底できていないからかもしれません。
さらに革新が生まれないのは現状に満足してしまい
①~③がボケていることが原因かもしれません。
この①~⑧までをチャート図にし、管理者でなく社長に見せ、
「貴社ではこの流れで途切れている点はないですか?」と問うと、
どの社長でも「ここが上手く行っていない」と、
どこかを指さして回答します。
上記の問いを出すのは、全社を俯瞰的に見て、問題を見つける。
その発見力を磨くためです。
管理職は、「人ではなく経営方針を管理する人」です。
本来であれば社長が現場に入って、
社員に指示命令するべきところです。
が、社長の体は一つしかありません。
そこで管理職が社長の分身として現場を預かります。
そして現場の皆さんとともに経営方針の実現を目指します。
その社長の分身である管理職がどれだけ育てられるかで、
任せられる現場の数が決まります。つまり会社の成長力が決まります。
以前『マネーの虎』というテレビ番組がありましたが、
そこに出ていた社長たちの会社の多くが
後に倒産したと言うニュースがあります。
その原因は、管理職不足が招いたものだと私は思っています。
「あなたの会社はどんなときに倒産するか?」
社長が毎日のように考えているこの問いを、
管理職にもぜひ投げて考えさせてください。
そして、その答えを共有しましょう。
すると、不思議です。
「わが社は今よりもっと良くなる」という
期待が沸いてきます。
是非一度、試してみてください。
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.450
by V字経営研究所 代表 酒井英之
「なぜ、モノをつくる前に人をつくる必要があるのか?」
突然ですが問題です。
「モノをつくる前に人をつくれ」って言いますよね。
でも今は自動化の時代です。
マニュアルに従えば、誰もが同じモノをつくることができます。
それなのになぜ、モノをつくる前に人をつくる
必要があるのでしょうか?
この問いをクライアントのメーカーの人たちに
投げかけてみました。
すると、様々な意見が出ました。以下はその一部です 。
・マニュアルだけでは、改善ができない
・人が育たなければ新しいものは創造できない
・利他の心なければ、人の心に響くものは作れない
・人間ができていないと、マシンは使いこなせない …etc
これらを要約すると
この先50年、100年と続く経営を目指すのなら、
改善を重ね、新しいものを生み出す必要があります。
人が育てば、未来はある。
そのため人づくりは欠かせないのです。
こうした社員さんの意見を聞きながら、
私はある有名な経営者の講演を思い出していました。
講演者は、(株)スノーピークの会長の山井太さんです。
スノーピークは、コアなファンに
支持されているキャンプ用品メーカー。
コーポレートスローガンは「人生に野遊びを」です。
山井会長によると、自然の中でキャンプをすると、
親と子や、隣近所とのコミュニケーションが活発化し、
都会では失われがちなふれあいや助け合いが生まれ、
人間性が回復する。それを広げることが同社のミッションです。
そのため現在はキャンプ用品の製造販売だけでなく、
リゾート型のキャンプ場の運営や、
アパレルの開発と販売、都心で焚火を囲むイベント、
近年ではスノーピークイートというレストランも経営しています。
そんな革新を続ける同社の売上高は
2014年の55億から2020年は167億へ急成長。
山井会長は、講演会で以下のように語っていました。
(ここから)
「AIの発達によって繰り返し発生する業務や作業は、
もう人間の仕事ではなくなります。
人間は人間にしかできない仕事をするようになります。
それは真にクリエイティブな仕事です。
クリエイティブな仕事は、圧倒的な熱量から生まれます。
熱量が高い場所には、お客様が、社員が、情報が集まります。
そこにあるのは「ワクワク、楽しい、好きだ!」という感情です。
ところがAIには「好きだ!」という感情がありません。
「どっちが得でどっちかが損か」という、
合理的な判定を下すことができるだけです。
が、そのような判定をいくら重ねても、
熱量がないため、クリエイティブな仕事はできません。
今の主力商品が今後も売れ続ける保証はありません。
ビジネスモデルの転換を余儀なくされることもあります。
そうした時に、それを乗り越えられるのは、
好きなことに夢中になり、クリエイティブな仕事で
新しいものを生み出せる人だけです」
(要約ここまで)
つまり、持続可能な経営のために必要な
クリエイティブなアウトプットは、
あの北島康介選手のように、仕事をして
「超気持ちイイッー!」と叫ぶ人をつくらないと、
生まれないということです 。
では、社員の熱量を高めるには、
何をすればいいのでしょうか?
それがわかる面白い統計があるのでご紹介します。
2019年3月に「就職ジャーナル」が行った
社会人1000人へのアンケート結果です。
https://journal.rikunabi.com/p/advice/30610.html
このアンケートでは
「あなたは働くことが楽しいですか?」を尋ねています。
以下はその回答です。
楽しい=13.1%、まあ楽しい=34.7%
どちらでもない=25.7%、
あまり楽しくない=14.1% 楽しくない=12.4%
この統計で面白いのは、
「仕事が楽しい」と回答した人と
「仕事が楽しくない」と回答した人それぞれに
「何のために働くのか?」を質問していることです。
すると、「仕事が楽しい」と回答した人は、
以下のように回答しました。
「お金を得るため=62.3%
自分の才能や能力を発揮するため=12.3%
社会の一員としての務めを果たすため=11.6%
生きがいを見つけるため=11.6%
その他=2.1%」
一方、「仕事が楽しくない」と回答した人は、
以下のように回答しました。
「お金を得るため=87.7%
自分の才能や能力を発揮するため=0.7%
社会の一員としての務めを果たすため=2.9%
生きがいを見つけるため=6.5%
その他=2.2%」
ここから分かることは、
「仕事が楽しい」と感じている人に比べ
「仕事が楽しくない人」と感じている人は、
・自分の才能や能力を活かすこと
・社会の一員として貢献している意識
が圧倒的に不足していて、働くことの目的が
お金だけになってしまっているのです。
よって、「人をつくるため」に必要なことは、
まずは「あなたには〇〇の才能があるね!」とか
「あなたには〇〇の能力が身に着いたね!」のように、
社員の小さな成長を見つけホメることでしょう。
また「お客様がこう言って喜んでいたぞ!」とか
「見学に来た人が君の仕事ぶりに感心していたぞ!」と
第三者の評価を伝え、
「自分たちは結構凄いことしているんだ」
「自分たちは強く必要とされているんだ」と
一緒に喜ぶことでしょう。
それを積み重ねるうちに
「仕事が楽しい」と感じている人が増えてくれば、
その人たちが山井会長の言う「熱量」がどんどん高くなり、
組織としてクリエイティブなものを生み出すチカラが
高くなるのです。
あなたの会社の熱量はどうですか?
山井会長は、熱量を生み出すのは
トップの責任だと言っています。
まずはトップの「この会社と社員が好きだ!」の
熱量を高めましょう
そして「モノをつくる前に人をつくる会社」へと進化しましょう。