V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.441
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『今、一番重要な経営資源は何か?』
突然ですが、会社の中で
「最も重要な経営資源」は何でしょうか?
私がコンサルタントになった
30年前からよく聞かれる質問です。
その答えは時代によって変わってきています。
例えば、30年前は「ヒト・モノ・カネのヒト」だと言われました。
モノは無くなったらまた買えばいい。
カネはなくなったらまた借りればいい。
でもヒトだけは、いなくなったら
また採用すればいいとはいえない。
ヒトは、それぞれ固有のスキルがあり、
同じスキルを持った人はなかなか採用できない。
だからヒトが一番大切だということです。
ところが、今から20年ほど前にオフィスのIT化が進み、
属人化された仕事が減って仕組み化が進むと、
ヒトがいなくなったら、また採用すればいいという
意見が出るようになりました。
逆に、IT化と共に最も重要だと言われた資源は
「顧客リスト」に変わりました。
ネットやリアルな店舗で一度ご利用頂いたお客様に
DMや電子メール、SNS等を使って情報を発信し
リピートオーダーを獲得するビジネスモデルには
「顧客リスト」が欠かせないのです。
その「顧客リスト」は一度失われると、
復活させることが大変難しいです。
例えば、東日本大震災の時、事務所を丸ごと波に
さらわれてしまった会社がありました。
この顧客リストを台帳で管理していたため、
復興後の営業再開日に「今日から営業再開です。
これからもよろしくお願いします」という案内を
これまでの利用客に案内できませんでした。
もしこの会社が、「顧客リストを失うリスク」に気づき、
データセンタ等活用してバックアップを取っていたら
営業力をより早く復活できたことでしょう。
ゆえに「顧客リスト」こそ最大の資産だと言われたのです。
ただ、近年では顧客リストはデータセンタや
クラウドでの管理が当たり前になってきました。
すると「顧客リスト=最重要な資産」とは言われなくなりました。
ではここ10年は一体何が一番大事な経営資源なのでしょうか?
それは、管理者の時間です。
現在、どの会社もギリギリの人数で会社を運営しています。
そのため管理者=プレイングマネージャが常態化しています。
そしてその多くが、マネージャとして活動する時間以上に
プレイヤーとして活動に時間を割いています。
営業系のマネージャであれば、マネージャ自らが
大口の顧客を担当していることも少なくありません。
そのため何度もお客様に呼び出されたり、
資料作成や接待に時間を取られることが少なくありません。
その一方で、マネージャには
組織を成長発展させるための活動は欠かせません。
それは主に以下のような仕事です。
・部下育成、信頼関係づくり
・組織、チームの一体感醸成
・採用、育成、評価の制度設計
・理念、行動規範の浸透
・将来においても継続的に売上を伸ばすための戦略創り
これらの仕事は、「重要性は高いが緊急性が低い」仕事です。
そのため、「やらなきゃいけない」と気づいていても
先送りされることが多く、
結果的にほとんどやられていないケースが目立ちます。
いかがでしょう?
あなたの会社のマネージャは部下育成はしていますか?
部下の話を聴く個別面談はしていますか?
チームの一体感を高めるための活動や
理念・行動規範を腹に落とすための
ミーティングはなされているでしょうか?
上記の活動の重要性は、社長なら分かっていると思います。
なぜならどの会社も、今一番欲しいのは
主体性を発揮する人材だからです。
自ら問題を発見し、解決のための方策を考え、
それを実行する人財こそ、市場縮小の時代に、
会社と組織を成長させてくれる動力源なのです。
つまり主体性を発揮する人材が育つ組織。
その組織力を育む「管理者の時間」。
これこそがこの10年の最大の経営資源なのです。
少し大げさな言い方かもしれませんが「時間=命」です。
人生が充実するかどうかはひとえに時間を何に使ったかによります。
自分が大切にしたいことを明確にし、
それを大切にするために時間を使えば
きっとその人の人生は充実したものになるでしょう。
逆に、大切にしたいものはあるにもかかわらず
それを大切にする時間が確保できなかったとしたら
後悔の多い人生になります。
家族や趣味を大切にしたいと思いながら
仕事が忙しくそれどころではなかったと嘆いている
経営者は少なくありません。
ゆえに時間=命なのです。
ではどうしたら、上記のような重要だけど緊急性の低い仕事に
時間を避けるようになるでしょうか。
そのひとつの答えがコンサルタントの活用です。
コンサルタントが入ることで、
・部下育成、信頼関係づくり
・組織、チームの一体感醸成
・育成、評価の制度設計
・理念、行動規範の浸透
・将来においても継続的に売上を伸ばすための戦略創り
などは、
「先生が来るからちゃんとやろう」
「宿題だからやらなくては」など、
今やらなくてはならない課題に変わるのです。
つまり、コンサルタントが入ることで
緊急性が高い仕事に変わるのです。
以上、会社にとって最重要な経営資源が何かということの
時代の変遷をお話ししました。
整理しますと、30年前は「ヒト・モノ・カネのヒト」、
20年前は「顧客リスト」
そして今日は「管理者の時間」となります。
是非あなたの会社でこの経営資源が
有効に使われているかどうか、チェックしてみてくださいね。
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.440
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『東京五輪に学ぶ、やらない後悔よりやった後悔』
東京五輪が終わりましたね。
賛否両論あり、期間中の感染拡大もありましたが、
数多くの名勝負、感動のシーンがあり、
「開催して良かった」という意見が大勢ではないかと思います。
今回のオリンピック開催の決断に対し、
「やらない後悔より、やった後悔」という言葉を思い出します。
この言葉通り、後悔には2種類あります。
「あれをやっておけばよかった」という「やらない後悔」と、
やってみて思うようにいかず、「こんなことなら
やらなければよかった」と思う「やった後悔」です。
このうち、前者よりも後者の方がましだ、
というのが、上記の教えのです。
では、なぜ「やらない後悔」よりも、
「やった後悔」の方が良いのでしょうか?
なぜなら、「やった後悔」は、
その後の心がけ次第でその後悔を消すことができるからです。
「やった後悔」は必ずそこに反省材料があります。
上手くいかなかった原因を振り返り、
「そうか!こうすればよかったんだ!」との気づきを得、
その学びを次に活かせば、 次は同じ失敗はしません。
成功に向け、前進することができます。
すると、「あの時失敗しておいて良かった」と思えます。
こうなると、失敗は失敗でなくなります。
むしろ自分に大事なことに気付かせてくれた
貴重な経験であったと「感謝の気持ち」に変わってきます。
こうして、自分の中から後悔が消えるのです。
「やった後悔」は、大変貴重な学びの場です。
「過去と他人は変えられない」と言いますが、
「やった後悔」という過去は、その反省を次に活かすことで
その意味づけを変えることができるのです。
これに対し、「やらない後悔」は、
何ひとつ具体的なアクションを起こしていないので、
自分の行動を反省したくても、反省の仕様がありません。
経験が学びに変わらないので、何年経っても
「あぁ、あの時こうしておけば良かった…」という
妄想だけが残ります。
すると今日と同じ後悔を何十年後もしてしまいます。
今回、コロナ禍で五輪を強行開催したことで、
五輪関係者は多くの学びを得たと思います。
この学びは今後開催される五輪に活かされるでしょう。
これらは、やったからこそ得られた学びです。
もし中止にしていたら、永遠に
「あのとき東京でやっていたら…」と思い続けることになります。
「やらなくて正解」「いや、もしやっていたら…」の不毛な議論が
何十年経っても続いたことでしょう。
ところで、経営者にとって後悔は、
非常に恐ろしい感情です。
なぜなら、後悔することを恐れてしまうと決断が鈍り、
ビジネスチャンスを逸してしまう可能性があるからです。
では、経営者がタイミングよく、
適切な意思決定するために、
後悔を恐れる気持ちとどう向き合うのがいいのでしょうか?
ここでは2つお伝えします。
第一は、「やった後悔」であれば、
「そこから必ず学びがある」と信じ、肚をくくることです。
「起きていることはすべて正しい」という言葉がありますが、
これは、仮に失敗したとしても、
そこから何かを学ぶことができれば、
それは正しいことだという教えです。
よって意思決定するときは、
「うまくいくに越したことはないが、
仮にうまくいかなかったとしても、
そこからは貴重な学びを得ることができる。
だからやる」と考えましょう。
第二は、そもそも後悔は「他にも選択肢があったが、
それを選ばずに『しまった!』と悔いる感情」です。
この「他にも選択肢がある」という発想をやめます。
意思決定をするときは、「こうなることは必然だ。
これは神様のお導きなのだ」と思うようにするのです。
今回の五輪でも、「よりによってなぜ日本で開催する
このタイミングに、百年に一度しかないパンデミックと
重なっちゃうのだろう?」と考えた人は、
政府にも五輪関係者にも市民にも大勢いたと思います。
が、それもまた必然であったと考えるのです。
コロナ禍の五輪は誰が考えても大変難しいものでした。
でも、私たち日本人がその引き受け役として、
世界中から選ばれたと考えるのです。
なぜ日本人が選ばれたのか。
ここに納得できる意味づけができれば、
他のシナリオがあるという前提を消すことができます。
経営者が、決断力、行動力、勇気を高める上で、
上記のような「後悔という感情に対する対処法」を
身に着けることはとても大切なことです。
私はコンサルタントになって32年、
多くの経営者の悩みを聴いてきました。
信じられないトラブルに見舞われることもよくあります。
そんなとき、私が最もよく使う言葉の一つが以下の言葉です。
「今回のトラブルは、社長として成長するために、
『ここから何を学び取れ』とメッセージだと思いますか?」
そうすると、後悔特有の「くよくよした感情」を
前向きに変えることができます。
起きてしまった事実は変えられませんが、
後悔の感情は自分の意味づけ次第で変えられるのです。
五輪に出場した選手の皆さん、大会運営関係者、
ボランティアの皆さん、お疲れ様でした。
そして、多くの感動と、次をもっと良くするための
気づきと学びをありがとうございました。
<若手社員の採用&育成で悩んでいる方へ>
好評いただいている、後継者たちの戦い第8弾!
今回の主人公は前々回のこのメルマガで紹介した
ハウスメーカー。
ほんの10年前、年間10棟そこそこだった赤字会社が
今や年間150棟を手掛け、注文住宅では
岐阜県下No.1に躍進しました。
その秘訣は、若手の採用と、
若手でも活躍し、成果が出せる仕組みにありました。
『住宅メーカーを再建した3代目の人材戦略 若手の営業力を高める工夫』
https://smbiz.asahi.com/article/14405304