V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.413
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『7割経済を生き抜く高密度経営とは』
7割経済という言葉をよく聞きますね。
Withコロナの時代は、売上が従来の3割減でも
やっていきましょうという話です。
今や全業種がこの水準に備えないといけません。
ではどうしたらよいのでしょうか?
7割経済下でも、わが社だけは10割経営したいと望むなら、
密度=生産性を上げるしかありません。
生産性を上げる主な方法は二つあります。
ひとつは AI を使って生産性を上げる方法です。
もう一つは社員一人ひとりのレベルを上げて、
コミュニケーションを活性化し、創意工夫を生み出す方法です。
AI を使って生産性を上げる方法については、
(株)経営共創基盤の冨山和彦代表が次のように語っています。
富山氏は、産業再生機構のCOOだったことで有名ですが、
現在は茨城交通や福島交通等のバス会社も経営しています。
バス会社ですから、乗車率アップが収益に直結します。
そこでGPSを使ったかアプリを用い、スマホで
バスの現在地と予定到着時間を分かるようにしました。
これにより、「歩くよりはバスを待っていた方がいいな」と
思う人を増やし、乗車率アップに繋げています。
バスのルートには、かつては大勢が利用したものの
現在は誰も利用しない停留所がいくつもあると言います。
それをICカードのデータを分析して見直し、
より効率の良いルート変更しています。
また、事故を起こすことがバスの運行を妨げますので
ドライブレコーダーを使って、運転手の動作をチェックし、
事故を起こさない運転を徹底しています。
例えば、バスの事故は乗客の車内での転倒が一番多いです。
乗客がちゃんと座ったことを確認してから発車しているか、
つぶさに観察します。
それを本人にフィードバックそ、生産性を上げるのです。
冨山氏はこうしたAIは、自ら開発するのではなく
既にあるものを自社向けに応用すれば良いと語ります。
開発ではなく応用すればよいだけですから、
中小企業こそ取り組むべき生産性向上だと言います。
自社の今のやり方のどこにムダが潜んでいるのか。
ムダ取りの視点があれば、応用できそうですね。
また、もう一つの生産性向上については、
慶大の前野隆司教授の著書『幸せな職場の経営学』に
こんな一説があります。
「イリノイ大心理学名誉教授のエド・ディーナー氏の論文では
主体的幸福度の高い人の生産性は、そうでない人に比べ
創造性3倍、生産性31%、売上げ37%高い。
かつ転職率・離職率・欠勤率が低い」。
主体的幸福度が高いと、生産性が31%も高くなるとは驚きです。
ではどうしたら、主体的幸福度を高めることができるのでしょうか?
前野教授は著書の中で、
幸せは以下の4つの要因で構成されているといいます。
「ありがとう」「やってみよう」
「なんとかなる」「ありのまま」
これらをより多く感じられる組織が、
主体性を生み出し、幸福度の高い組織だというのです。
同じことを、マズローも述べています。
マズローの欲求5段階説は皆さんもご存知だと思いますが、
第5段階の欲求は、自己実現欲求です。
この自己実現欲求は、まさに主体性発揮です。
その第5段階の欲求は、
第4段階が満たされた時に生まれます。
第4段階の欲求は承認の欲求です。
承認の欲求は仲間から認められることです。
よって「褒められる」「感謝される」「必要とされる」
「許される」「聴いてくれる」「わかってくれる」などの行為が
職場の上司や同僚によって行われれば、
自ずと第5段階の欲求を持った主体的な人が増えてくるのです。
にもかかわらず、実際には「褒めてもらえない」
「感謝もされない」「上司が聴く耳を持ってくれない」
「何を言っても否定される」
それらが原因でやる気を失う社員はとても多いです。
その真逆で、部下との個別面談を毎月行っている会社は、
社員間の仲が良く、活気に満ちているように思います。
「この世界は、食べ物に対する飢餓よりも
愛や感謝に対する飢餓の方が大きいのです」は
マザーテレサ氏の言葉ですが、まさに至言ですね。
同じことを、松下幸之助翁も語っています。
翁は「松下電器は何をつくるところかと尋ねられたら、
松下電器は人をつくるところです。
あわせて電気器具もつくっております。こうお答えしなさい」と
社員に語ったと言われています。
これは一人一人が人として成長すれば、
問題に対して自分たちで解決の選択肢を出すことはできる。
もし自分たちで問題を解決できたら、
とても楽しいと感じられるはず。
それが、「もっと良くしよう」という気持ちを育んで
さらなる主体性を引き出す、という意味です。
生産性向上というと、
誰かがより合理的になるよう仕事を設計し、
その人の指示通りに仕事をすれば
効率が上がるように思われるかもしれません。
しかし、指示仕事ばかりやっていると、
人は無口・無表情になり、笑顔も消えていきます。
一方、自ら問題を見つけ、
それを解決する創造仕事が増えれば、
職場には会話が増え、笑顔があふれます。
7割経済下を10割経営で生き抜くには、
それだけ密度を上げ、創造仕事を増やす必要があります。
密度を上げるには、AIを駆使したムダの排除はもちろんですが、
同時にコミュニケーションの密度を上げる必要があります。
あなたの会社では、どのようにして
コミュニケーションを活性化しますか?
来年の計画の中に、ぜひそれも取り入れてくださいね。
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.412
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『2-6-2の最後の2を再生するには』
人は集団になると2-6-2に分かれます。
意識高い系が2割。普通が6割。意識低い系が2割です。
今日はその意識低い系の2割をどうするかについて
考えてみたいと思います。
先日、ある社長と、
「意識低い系の2割をどうしたらいいか」議論しました。
この社長は「群れの理論」をよく勉強していました。
例えば働き蟻は、全ての蟻が働いてるように見えますが、
よくよく観察すると、2割ぐらいは
何もしないサボり蟻がいます。
そのサボり蟻ばかりを集めて集団を作ると、
8割はちゃんと働くようになり、
残り2割はサボるという観察結果が出ています。
この2割のサボり蟻は、意図的にサボっています。
それは、万が一外敵に襲われた時の用心のためだと
考えられています。
働き蟻は体力を消耗しているので、
外敵に襲われると簡単にやられてしまいます。
ところがサボり蟻の体力は有り余っています。
そこで外敵に立ち向かい、群れを守るのです。
つまりサボり蟻は、戦のない時代の侍みたいなものなのです。
私たち人間の集団も似たようなケースがあります。
普段、落ちこぼれ呼ばわりされている不良たちが
震災時にバイクを飛ばして援助物資を届けるなど、
市民を大活躍で助けてくれたという話は有名ですね。
また、組織全体が目標に向かって熱くなりすぎると
カルト教団のようになってしまうリスクがあります。
それを恐れて「自分だけは冷静でいよう」と
わざと無関心を装う冷めた人が一定割合出てきます。
よってどうしても、意識低い系と言われる存在が
一定数を出てしまうのです。これが「群れの理論」です。
したがって
「意識低い系の2割は放っておくしかない」というのが
社長の考えでした。
私も、それが正しいと思っています。が、今年の春、
あるクライアントからこんなオファーを頂きました。
もともと好成績だった営業部員が
最近あまり成果が芳しくない。
彼らを4か月かけて再生したいので手伝ってほしい。
指導に当たるのは私と、コンサルタントのB先生です。
私は受講生のマインドセット(動機づけ)を担当しました。
そしてB先生は、新規開拓に欠かせない
テレアポのスキルをマンツーマンで教え込みました。
そうしたところ、コロナの影響で
予定より時間がかかりましたが
なんと全員、V字回復したのです。
一体何が良かったのか。彼らがプロジェクトの最後に、
自らの行動を振り返って発表した中にヒントがありました。
最も変化したのは、
全員が「それまでの自分は間違っていた」と、
過去の自分を否定したことでした。
そして、これからは「毎日これを完遂する」という
明確な目標を持っていました。
当初、私が彼らと面談した時は、全員が
「自分のやってきたことは間違っていない」と考えていました。
では、どうしてそれが間違っていたと気づいたのか。
それは、B先生が教えたテレアポでした
研修の当初、彼らはこれが全然できませんでした。
日頃、親密先ばかりに足を運ぶ営業しかしていなかったので、
新規開拓をする力が全くなかったのです。
それをB先生に見本を示してもらい取り組みました。
すると徐々にアポイントが取れるようになってきました。
皆、B先生に褒めてもらえるようになりました。
こうなると、だんだん仕事が面白くなります。
そのうち「今日は何件かけて何件アポイントを取るぞ」と
自分で毎日目標を設定し、それを追いかけるようになったのです。
一般に人が変化する時は、次のような流れだと思われています。
「情報に触れる」→「意識が変わる」→「行動が変わる」
→「アウトプットが変わる」→「評価が良くなる」。
この高評価に気を良くして意識が高くなり、
更に行動量が増えていくサイクルです。
ところが、このような人は全体の2割しかいません。
意識高い系の2割だけが、
情報に触れただけで、自分の行動を変えられます。
そして、早々に成果を出すのです。
が、残りの8割は、情報に触れたところで
行動を変えるところまでは行きません。
「へぇ、そんなこともあるんだね」ぐらいで、
聞き流してしまいます。
残りの8割の行動が変わるサイクルは以下です。
「アウトプットが変わる」→「評価が良くなる」
→「意識が変わる」→「行動が変わる」。
8割の人は、アウトプットを見て、
それが評価されているのを見て、
「あれをするのがいいんだな」と気づき、
それから行動が変わります。
彼らは常に安心を求めているので、
うまく行くやり方を見て、実際に自分でやってみて、
上手くいくと確信してからでないと、行動に移せないのです。
したがって、8割の意識を変えるには、何はなくとも
「とにかくやってみてください。必ず上手くいきますから」
と言って強制的にでもやらせ、
何が何でも成果を出してもらいます。
そして成果が出たら、それを一緒に喜びます。
B先生は、そんな指導をし、皆を変えたのです。
彼らの変貌ぶりを見て、
私は、新しいやり方を覚えさせること。
そこに自信が持ち、「これまでの自分は間違っていた」と
気づけた人は必ずV字回復できるのだと確信しました。
これは企業も同じですね。
「これまでのわが社は間違っていた」と自分にダメ出しし、
「では何をすればいいか」が、明確な企業は必ず再生します。
「人も企業の必ず変われる」。
コロナ禍によって様々な前提が崩れた今年だからこそ、
この気づきを、来年につなげていきたいと思います。