V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.389
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『社員の集中力を引きだす方法』
人は不安を感じます。
なぜか。
暇だからです。
目の前の何かに没頭していたら、
不安を感じている余裕はありません。
宅急便サービスが生まれたとき。
ヤマト運輸は4年連続赤字でした。
社員は「こんなことやって大丈夫なのか」
不安に駆られます。
そんな中「遠くのお客様のために
たったひとつの荷物を持っていってください」
という指示が届きます。
しかも、大雪の降る悪天候。
が、当時の小倉社長は
「もって行ってください。
サービスが先、利益が後」
と社員に繰り返し伝えていました。
ここで「サービスも利益もどっちも大事」と言うと、
現場は迷ってしまいます。
が、優先順位を示しておけば、
社員は、その迷いを吹っ切ります。
もちろん、運んでいる最中に
「なぜ自分がこんなことしなくちゃいけないんだ」と
納得できない社員もいるでしょう。
そんな社員も、配達先のお客様から
「ありがとうございます!」と言われたら、
その瞬間に不平も不安も吹っ飛んでしまいます。
トップがわが社の理念に沿って、
優先順位を明確に示す。
それだけで社員は
「お客様のことだけ」に集中できます。
そして、不安を忘れるのです。
私のクラアントの話をしましょう。
ある訪問看護業を営む社長は、
看護師の集中力を引き出すために
次のように伝えています。
「会社には売上など様々な数字目標があります。
が、そんなのは全て二の次です。
皆さんは、お客様から『親切ですね』と
言われることを目指してください。
『親切ですね』が最上級の言葉です」。
私はこの言葉を同社の経営方針発表会で聴いたとき、
鳥肌が立ちました。
なぜなら、このような「目指すべきホメ言葉」があると
今やるべきことを現場が考え現場で判断し、
そこに集中できるからです。
優先順位が明確だと、自己判断ができます。
いい結果が出ると、次に立ち向かう勇気が湧いてきます。
同社は、ケアマネさんたちの推薦で
お客様を増やし続けています。
看護師たちが今日も「親切ですね」と言われる
サービスを生み続けているからです。
別のクライアントのケースも紹介しましょう。
ある大手の物流会社の二世経営者は、
今から15年前、こんな体験をしました。
彼は、30代半ばで先代から会社を引き継ぎ、
売上規模をそれまでの2倍以上に伸ばしました。
勢いに乗った彼は、さらなる拡大を目指し、
トラックや倉庫に次々と投資しました。
すると、メンテナンス不良など
予期せぬトラブルが続出。
一気に赤字に転落してしまったのです。
社長は毎日不安で不安で、
眠れなくなってしまいました。
ある日、眠れないので夜明け前に会社に行きました。
誰もいない倉庫を歩いていると、
ゴミが落ちていたので、それを拾い片付けました。
なんだかとてもすっきりしたといいます。
それが気持ち良かったので、
翌日も未明に会社に行って現場を掃除しました。
すると、彼の中で変化が起きました。
職場でもっと徹底すべきことや、
守るべきことことに次々と気付くようになったのです。
そして、それを実際に改善すると、
職場の社員たちの笑顔が増えていきました。
若い社長が毎朝率先して掃除をするので、
他の社員もそれに続きました。
そして気づいたことを改善していきました。
いつしか掃除は、同社の当たり前の活動になりました。
改善活動も盛んになりました。
社長の頭からはすっかり不安が消えました。
そして、自惚れとは違う、
本当の自信が湧いてきたと言います。
あれから15年経った今、
同社の売上は当時の4倍にまで成長しています。
その原点は、悩むよりも
掃除という行動に集中することだったのです。
不安の9割は、自分が描いた妄想から生まれます。
それをなくすには、
妄想する暇がなくなればよいのです。
それにはまず行動し、そこに集中すること、
目の前にお客様がいるのなら
お客様に喜んでもらうことに集中しましょう。
お客様がいないのなら、掃除に集中してみましょう。
そうしたらコロナ禍への打ち手も見つかるでしょう。
今、あなたの会社の社員は
何に集中すべきか明確ですか?
『真田幸村に学ぶ籠城戦の勝ち方』
「今はまるで籠城しているようですね」
コロナ禍の現状について話していると、
ある社長がポロッとこう言いました。
「籠城か……確かにそうかもしれない」
そう思った私は、
籠城の戦い方について調べてみました。
すると、籠城戦で勝つ方法は
2つだけだと書かれていました。
第1は、援軍が来ること。
第2は、奇襲に次ぐ奇襲で包囲網を突破すること。
この二点について解説してみましょう。
第1の援軍待ちで有名なのは、
秀吉の小田原合戦です。
強大な北条氏は西から攻め寄せる秀吉に対して、
籠城作戦を取りました。
それは北条氏が縁戚関係にあった徳川氏と伊達氏が
秀吉ではなく自分に味方すると期待していたからです。
しかしながら徳川氏も伊達氏も秀吉側につきました。
そのため、どれだけ籠城しても援軍が来ません。
結果的に北条氏は滅亡しました。
このことを、現状に置き換えてみましょう。
「早くコロナ禍が過ぎ去って
元通りにならないかな……」と
多くの企業が耐えています。
耐えていれば、いつかコロナ禍は終息するでしょう。
が、以前と同じようになるかどうかわかりません。
あなたは、コロナ終息後の姿が、
以前だと同じとお考えですか?
例えば、ある外食店では三密を避けるために
席数を3割(7/10)減らして営業を再開しています。
この状態で従来と同じだけの収益を出そうとすると、
客単価か客回転をその逆数の
4割アップ(10/7)しないといけません。
それを実現しようとしたら、
メニューをより高級なものに変えるか、
オペレーションを工夫するか、
固定費を抑え、縮小均衡を図るしかありません。
このように、やり方を変えないと
アフターコロナは生き残れません。
ただ待つのではなく、終息後に備えて準備をする。
それを今から始めないと、勝機を逸してしまいます。
第2の「奇襲に次ぐ奇襲を繰り出す作戦」は、
大阪冬の陣で真田幸村が「真田丸」という砦を作り、
徳川軍を迎え撃った例があります。
真田丸は大河ドラマのタイトルにも
なりましたから有名ですね。
幸村は、大阪城に籠城しても援軍が期待できないので
討って出るしか勝機がないと考えていました。
しかもそのチャンスは、大軍に囲まれる前しかない。
そこで徳川全軍が大阪へ到着する前に真田丸を築き、
包囲できなくしてしまおうと考えたのです。
しかしながら、豊臣家の重臣たちと
幸村のような浪人たちとで意見がまとまらず、
その間に本丸に大砲を打ち込まれて敗北しました。
「奇襲に継ぐ奇襲」で成功するポイントは、
幸村のように「速く仕掛けること」と、
「全軍が一致団結して動く」とことです。
私はボトムアップ型の経営指導が得意ですが、
それは平時の時であって、有事の時は全く別です。
有事の時は、なんと言ってもスピードが命です。
トップがリスクを背負う覚悟を決めたら、
「私に続け!」と全社員に号令を発し、
率先垂範で動かないといけません。
現にTVでは連日のように安倍総理やトランプ大統領、
習総書記の言葉が報道されています。
危機の時はトップの言葉と行動が、
平時の何倍も重いメッセージになるのです。
スピード意思決定と全社を一体化させるのに
欠かせないのが、トップが信じるビジョンです。
私は昨年1年間、中小企業大学校等の社長塾で
約50社のビジョンづくりをお手伝いしました。
その中の一人は、先日新聞社から
「コロナ禍を受けての取組は?」と尋ねられ、
次のように答えています。
「既存事業の停滞を機会と捉え、かねてから
力を入れたいと思っていた分野への投資を進める」。
昨年の受講生は、誰もこんな事態は想定していませんでした。
講師である私も全く考えていませんでした。
ただ五輪後には2年程度の不況が来ると予想されました。
オリンピックイヤーの後はいつもそうなるからです。
ですから社長たちは、
五輪後の不況を前提とし、さらにその先にわが社は
何を目指すべきか、わが社の2025年ビジョンを
考えに考え抜いたのです。
そうしてできた自分のビジョンを信じる社長は、
コロナが過ぎ去るのを待ってなんかいません。
「不況が予想よりも早く激しく来た。
が、わが社が目指していることは変わらない」
と受け止め、着実に手を打っています。
会議を重ねて何一つ行動しないことを
「小田原評定」と言います。
今一番まずいのは、ただ時が過ぎるのを待つことです。
ヒントは、過去の蓄積の中にあります。
「自分達はいったい何を目指してここまで来たのか」
「ここから先、どんな会社にしたいのか」。
それを考えて、遅くならないうちに
真田丸のような奇襲を繰り出していきましょう。
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.387
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『3つの「ことわざ」に学ぶ危機突破のヒント』
緊急事態宣言が解除される見通しとなりました。
しかし経済活動の復活にはまだまだ時間がかかりそうです。
そこで今回は、今何をするべきか。
叡智の結晶ともいうべき「ことわざ」3つを
題材に考えてみたいと思います。
ことわざ1.
「疲れたら休め。友は遠くへ行くまい」ツルゲーネフ
今あなたの会社の受注はどうでしょうか?
業種差は大きい思いますが、
減っている会社が大半ではないでしょうか?
減っている内容をを分析してみましょう。
どんなお客様の受注が減ってるでしょうか。
こんな時お客様は2種類に分かれます。
「こんな時ですから」と言って離れていくお客様
「こんな時だからこそ」お願いしたいというお客様です。
離れていくお客様は、
安くしか買ってくれないお客様です。
より安い仕入先があればそちらへ行ってしまいます。
一方、残るお客様は、
貴社の独自の技術・サービスを
高く評価しくれているお客様です。
その技術・サービスこそが他にはない、貴社の強みです。
今、それが最もよくわかる時です。
今後、その技術・サービスに特化した情報を発信し、
それに反応のあった客先を増やしていけば
主力商品・事業をより高付加価値体質へと転換できます。
安価政策に走っている
ライバルとの体力差が一気に開きます。
今、貴社にオファーが来ている技術・サービスは本物です。
コロナは、それを見極める良い機会だと捉えましょう。
ことわざ2.
「まさかの時の友こそ本当の友」
人生には三つの坂があるといいます。
上り坂・下り坂・まさかです。
今はまさに、「まさか」の真っ最中。
こんな時に手を差し伸べてくれる方がいます
外食の宅配代行専門の出前館は、
取引先の外食産業も従業員を
臨時で受け入れています。
配達員が不足しているからです。
景気が元に戻り通常営業ができるようになれば
その人たちを元のお店に戻します。
外食産業の人も、腕に覚えのある
有能な従業員を解雇せず済みます。
名古屋市北区の社会保険労務士事務所の
北見式賃金研究所では、
従業員を解雇あるいは廃業したいというお客様があれば
その従業員に対し再就職を斡旋するための
合同会社説明会を開いています。
社長にとって何より辛いことは
長年会社を支えてくれた社員に
「辞めてくれ」ということ。
もし再就職先を決めてあげることができたら
その辛さを和らげることができます。
それを長年お世話になったお客様への恩返しとして
コロナショックが始まった
2月下旬から実施しているのです。
コロナショックの前まで中小企業は
慢性的な人手不足に悩んでいました。
良い人材が欲しいと思っている会社には
今こそチャンス到来です。
こうしたマッチングを引き受けられるのは
取引先は350社もある同事務所ならではです。
やむなく廃業を決めた社長には
本当にありがたいサービスですね。
私は同所の取引先様向けの
勉強会講師を務めていますが
北見所長のこうした取り組みを知り、
とても誇らしいと思います。
http://tingin.jp/seminar/after-corona.html
ことわざ3.
「汝の隣人を愛せよ」(イエス・キリスト)
意味:自分自身のことだけ考えずに、
まわりの人々にも愛情を持って接しなさい
「今、我が社がピンチだ。どうしよう」
と焦っている会社が多いと思いますが、
良い突破法を見つけるには、
「問い」を次のように変えてみましょう。
「今はお客様がピンチだ。わが社に何ができるかな?」
貴社がピンチなのは、貴社の お客様がピンチだからです。
ですから我が社のピンチを救おうと思えば、
何よりお客様のピンチを救うことです。
そこで以下の順番で、わが社にできることを探します。
1.数ある客先で今、ピンチのお客様を選定する
2.1の客先から「〇〇して欲しい」という
具体的なオファーが届いていないか、担当者に確認する
3.2のうち迅速に対応できることを選択して実施する
4.同様のニーズが他のお客様にもあるのではと仮説を立て、
「わが社では今、3の対応をしています」とアナウンスする
5.4にオファーがあれば対応する
例えば弊社では、複数の研修専門機関と提携しています。
これらのお客様が今、 集合研修を開催できず
ピンチに陥っています。
そうしたお客様を救わない限り弊社の仕事は増えません。
それらのお客様のニーズは
「オンラインでできる研修」はないか?
あるいは、 「従来やっていた集合研修を
オンライン化してできないか?」です。
するとこれまで集合型で当たり前でやっていた研修も、
実はオンラインでやった方が
スキルアップ効果が見込めるのではないか?
と思えるものがいくつも見つかりました。
そして、それらを提案すると大変喜ばれました。
現在はそのサービスをお客様同士が
競合しない範囲において提案し、受注しています。
ピンチはチャンスと言いますが、
お客様のピンチはお客様のチャンスであり
貴社のチャンスでもあるのです。
ピンチ脱出会議は、チャンス創造会議。
是非と「問い」を変えて社内の衆知を結集してください。
以上、3つのことわざから、
今を生き抜くヒントを考えてみました。
最後に、本田圭佑選手の口癖をひとつ。
「いい準備をしましょう!」