2019/07/25
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」vol.352
by V字経営研究所 代表 酒井英之
コラム『ビジョンづくりにヒントの見つけ方』
東京五輪まであと1年になりました。
各地でイベントも開かれていますね。
さて東京五輪後の経済が心配だという声をよく聴きます。
その先の2030年に向けて
我が社はどのようにして成長発展していくのか、
多くの企業が不安を抱えています。
そのため昨今は、ビジョンづくりのお手伝いする機会が
例年になく増えています。
そんなビジョンづくりの一環として、
弊社では今期から従来とは違う新しい方法を取り入れています。
それは「SDGs(エスディージーズ)から
わが社の未来を考えてみよう」です。
あなたはSDGsという言葉を聞かれたことがありますか?
SDGsは2015年9月に国連サミットで採択された
「持続可能な社会の実現に向け、
2030年までに地球上に存在する17の課題について
それぞれの国や自治体、企業が自分にできることを見つけ
取り組んで解決していこう」という国際目標です。
17の課題はこちらです。
https://imacocollabo.or.jp/about-sdgs/
これまでの企業ビジョンは、
自分たちが自分たちの得意技を明確にし、
その技にさらに磨きをかけていくと
こんな社会を作ることができるかという
自分発想で考えることが多かったです。
しかしこのSDGsができてからは、
以下のように考えます。
まず社会の課題をしっかり認識し、
それをクリアしていることを
ピジョンとして頭にイメージします。
そしてその解決に向け、
自分の得意技を磨いたり、他人の得意技も借りながら
どうやって近づいていくのかを考えます。
つまり最初に自分の強みありきで考えるのではなく、
最初に社会の課題ありきで考えるのです。
ビジョンを考えるとき、
「社会の課題ありき」で考える大切さは
従来からも言われていました。
が、自社が必要とされている社会的課題がよくわからず、
また、テーマが大きすぎて
どうしても得意技の延長線上で考えてしまいがちでした。
しかしSDGsが示されてからは
私たちが解決すべき社会的課題が
17の選択肢として示されるようになりました。
そのため、どの企業も自分が役に立てそうな課題を選び取り、
そのゴールをイメージし、そこから逆算して
自分たちの未来を描けるようになったのです。
例えば先日、ある新聞販売店の幹部社員の皆さんと
SDGsを元に2025年ビジョンを考えていたときです。
何番の課題なら解決に貢献できそうか尋ねたところ、
13番の「気候変動に具体的な対策を」が
取り組める課題の一つだという意見がありました。
新聞販売店は毎朝夕に新聞を配達しながら
地域の状態の変化をチェックすることができます。
そのため防災・減災の視点で
地域の危険箇所を見つけることができます。
また災害時には自治体の情報網の一つとして
情報提供機能を果たすことができます。
そうした役割を、誰かに頼まれてからやるのではなく
SDGs に取り組む企業として、
それが負担なくできる仕組みをつくり、
人財を育てながら当たり前にやっていこうという考えです。
私はこうした幹部社員の意見を聴きながら、
「自分は単に新聞配達をしてるだけではない、
地域の安全・安心を見守る一人だ」という
社員に新たな誇りを持たせるいい取り組みだと思いました。
このような気づきをくれるのが、SDGs の優れた所です。
SDGsについては、
以下の約7分の動画が大変分かりやすいです。
https://www.youtube.com/watch?v=z3foLsvz_kg
この動画の中では、5人が自分の2030年ビジョンを
フリップに書いて見せてくれます。
皆さんの会社でも、このような言葉が
2030年ビジョンとして語られると良いですね。
是非一度SDGsについて考えてみてください。
2019/07/18
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」vol.351
by V字経営研究所 代表 酒井英之
コラム『売上目標は本当に必要ですか?』
今年も後半戦に入りましたね。
皆様の前半戦はいかがでしたか?
先日、ある後継社長からこんな質問を受けました。
「酒井さん、売上目標がない会社ってあるのでしょうか?
弊社は今、中期経営計画を立案しています。
が、これまで売上目標を掲げたことがないのです。
そこで掲げなくていいものかどうか迷いまして
いろんな書籍で調べてみたのですが、
どこにも『売上目標がなくてもいい』とは書いてないのです。
実際のところはどうなのでしょう?」
この会社は製造業で、オンリーワンの技術を持っています。
また無借金経営で、資金繰りに困ってはいません。
そのため、これまで売上目標がなくても
経営に支障がなかったのです。
では実際に売上目標がない会社があるかといえば、あります。
以下にその代表的な3社をご紹介しましょう。
第1は、長野県にある中央タクシー(株)です。
このタクシー会社は、稼働率がなんと98%という高さです。
これは通常のタクシー会社の3倍の水準で、
簡単に言うとほぼ一日中、空車がない状態です。
稼働率が高い要因は、ホスピタリティの充実です。
運転手の皆さんが大変丁寧で親切な応対をしてくれるので
「中央タクシーしか乗らない」というお客様が大変多いのです。
そのため、タクシーが予約で埋まってしまうのです。
稼働率98%の会社が、
売上目標を掲げたら目標達成のために社員は、
長時間労働を余儀なくされてしまいます。
このようにフル稼働状態が続いている会社では
売上目標を立てないケースがあります。
第2は、福井県にある清川メッキ工業(株)です。
同社は主に自動車部品のメッキ加工をしています。
売上目標を持たない理由は、売上を求めて営業活動をすると
どうしても「値段を下げて受注しようとする」からです。
値段を下げて受注をすると、同業者の仕事を奪います。
さらに値段を下げて取引をしたお客様は、
もっと安い値段の会社があればそちらへ去っていきます。
「営業活動するとろくなことがない」と清田社長は言います。
同社の受注活動の主体は、展示会への出展とホームページです。
この二つで引き合いは年に500件ほどになります。
そうした引き合いに一件一件に、試作費をいただいた上で
試作を作って対応することで新規受注先を開拓しています。
自社製品を持たない同社の売り物は技術力です。
こうして価格勝負より技術力勝負に持ち込んでいるのです。
第3は、岐阜県の未来工業(株)です。
同社は主に電気工事業者が使うツール類を開発し、
問屋を通して全国販売しているメーカーです。
同社の特徴は製品の独自性の高さにあります。
その開発に最も必要な情報は、
現場の電気工事業者が「今、何に困っているか」です。
それを知るためには、営業担当者が工事現場に行き、
直接困りごとを聞いたり、工事を観察する必要があります。
ところがもし営業マンに売上目標を持たせてしまいますと
営業マンは工事現場に行かず問屋ばかりに行ってしまいます。
そして数字を作るために無理に在庫を取らせる
押し込み販売をしてしまいます。
これは同社が目指す問題のお客様へのお役立ちを目指した
営業活動とはかけ離れた姿です。
そのため営業目標を設定しないのです。
これら3社に共通することは、
一番やりたいことがお客様の満足の追求であること。
そのために会社として集中すべき対象が
ホスピタリティや技術力の向上、現場観察など明確で、
その実行のためは「売上数字を追う」活動が
阻害要因になってしまうことです。
この経営姿勢は、世の中で常識と言われてることでも、
自社の目指すところに合わなければ
それに従う必要はないということを示しています。
自社が一番やりたいことは何なのかを見極めましょう。
そして、 冒頭の質問をくれた社長のように
「なんかおかしい」と感じたら、
常識を疑う癖を身に付けたいものです。
V字研メルマガvol.350
1回3分「ヘコタレをチカラに」vol.350
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『酷暑対策は幹部社員が育つチャンス』
暑い日が続いていますね。
今後気温はますます高くなると予想されます。
工場や建設、物流現場などで働いている社員には
十分な熱中症対策を施してくださいね。
昨年は記録的な猛暑でした。
そのため社員数200人のある製造業では、
通常は13時から15時までは無休憩なのですが、
14時から10分間の休憩を入れました。
そうしないと暑さで体が持たないからです。
また、会社からスポーツ飲料を
毎日ひとり一本、社員に支給しました。
水分と塩分を補給するためです。
このような配慮は、社員に大変歓迎されました。
よって熱中症が心配な職場では
ぜひ参考にして頂くと良いのですが、
同時にこれは幹部社員の思考力を鍛えるための
大変良い訓練になります。
と言いますのも、休憩を10分間増やし分、
そのまま終了の時間を10分間延長しますと、
それだけ残業時間が増えてしまうからです。
たかが10分、と思うかもしれません。
が、これが月20日間続くと200分。
2ヶ月で400分となります。
年間で決めた総残業時間をそれだけ使ってしまう訳です。
すると本当に残業して欲しい繁忙期に
社員にその分の残業をお願いできないリスクが発生します。
よって「業務延長は無し」で休憩しなければなりません。
つまり、1日8時間の勤務の場合は、
10/480=2%の生産性向上を実現しないと
従業員を暑さから守ることができないことになります。
スポーツ飲料毎日1本も、わずかな金額のように見えます。
が、一本150円として社員数200人へ毎日支給となりますと、
1日あたり3万円。40日では120万円になります。
やはりその分の生産性を上げないと
社員を暑さから守ることはできません。
この他にも扇風機を内蔵した作業着などを
採用する会社もあります。
これらもそれなりのコストが発生をするわけですから、
作業内容が今までと同じでいいわけではありません。
そのコストを回収できるよう、
生産性の向上を図らなければなりません。
それを考えるのは現場の社員の仕事ではありません。
社員が働きやすい環境を用意するのは幹部社員の仕事です。
休憩時間増や飲料支給等の会社の施策に感謝しながら、
それが当たり前にできる状況をどう作るか、
それを考えるのが幹部の仕事なのです。
社員ファーストの施策は、
それを継続する以上常に生産性向上を伴うものだ。
幹部はそう割り切って、
小さな創意工夫を重ね、乗り切っていきましょう。