2019/06/27
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」vol.348
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『経営統合は、理念の統合に注目しよう』
新聞で経営統合のニュースを見ない日はないですね。
成長産業と言われている業界でも、
成長の鈍化とともにそんな話が聴かれるようになりました。
ドラッグストア業界6位の
スギホールディングス(以下スギ薬局)が、
同7位のココカラファイン(以下ココカラ)と経営統合
経営統合を目指しているという報道がありました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45582290R00C19A6I00000/
この報道では、ココカラは、
同5位のマツモトキヨシ(以下マツキヨ)とも
経営統合を検討していると伝えています、
私は、個人的にココカラとスギHDが
統合をすると良いと思っています。
なぜならココカラとスギHDは
理念とスローガンがほぼ同じだからです。
理念は社員皆で大切にする価値観を定めたもの。
そのため、店のつくり、雰囲気、品揃え、
接客サービスの内容に影響を与えます。
それがほぼ同じということは、
統合によってお客様が受けるデメリットが
ほとんどないということです。
ココカラのスローガンは
「人々のココロとカラダを元気にする
おもてなしNo.1をめざして」です。
一方スギHDのスローガンは
「もっと近くに、ずっと頼りになる
あなたの笑顔のチカラになる」です。
似ている、というより同じですよね。
Webサイトを見て頂くと顕著ですが、
ココカラのサイトはお役立ち情報が充実しています。
https://www.cocokarafine.co.jp/top/CSfCustomerTop.jsp
スギ薬局のサイトも、主役はサービスの案内です。
https://www.sugi-net.jp/
これがマツキヨになりますと、
どうしても化粧品寄りの品揃えと価格訴求になります。
https://www.matsukiyo.co.jp/store/online
そのため、もしマツキヨとココカラが統合すると、
その後の両社の魅力が店舗でもWebサイトでも
ずいぶん変わることが予想されます。
それは客離れを起こすリスクになります。
さて、私がスギ薬局を知り、凄い会社だと思ったのは、
愛知県の凄い会社を調査していた2000年です。
当時はまだ愛知県内のみで約40店舗でした。
私がスギ薬局に注目した理由は2つあります。
第一は、その理念です。当時のスローガンは
「かかりつけの薬局を目指して」。
「近い将来高齢社会がやってくる。
病院はキャパオーバーで自宅療養する人が増える。
そこで必要になるのは、患者さんに寄り添う
かかりつけの医者ならぬかかりつけの薬局。
自分たちがそれを担う」という使命を表現したものでした。
このスローガンは、他店との違いが鮮明で大変印象的でした。
特に当時のドラッグストアは安売りがメインで
薬剤師を配置していない店も少なからずありました。
ゆえに「かかりつけの薬局」を掲げることは
相談できる薬剤師のいる薬局だと宣言していたわけです。
また、顧客サービスの一環として
ポイントを景品と交換するサービスがありました。
ポイント交換サービス自体は珍しくはありませんが、
他店と違う点が一つありました。
そのポイントカードを顧客に持たせるのではなく、
店で台帳として保管していた点です。
お客さんが買い物すると、
レジの下から顧客一人ひとりの
ポイント台帳を取り出して判子を押していたのです。
なぜなら、そうすることでお客様と会話が増えるし、
お客様と接しなら地域のことをよく知る、
覚えることができるからです。
この手間のかかる台帳管理をする理由を聴いたとき
私は本当に驚きました。
同時に同社のCSに賭ける本気度を痛感しました。
現在、ポイント管理はシステムで行っていますが、
カウンターが対面式でお客様と話をするスタイルは
変わっていません。
そんなスギ薬局ですから、
理念が同じココカラと経営統合して、
それぞれの良さを活かしてもっと良いストアになって
全国に広がればよいと思っています。
経営統合は理念の統合から。
今後も統合のニュースは次々と出てくるでしょうが、
その点を注目してみていきたいですね。
2019/06/20
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」vol.347
by V字経営研究所 代表 酒井英之
コラム『仕事の効率化にAIを活用していますか?』
おはようございます。梅雨の晴れ間が続いていますね。
さて、最近の AI の進歩は目覚ましいものがあります。
先日クライアントで社員アンケート実施してしました。
社員数が100人を超える規模の大きなアンケートでしたので
フリーアンサーの集計が大変な作業になると予想されました。
が、担当者が音声入力機能を使って処理したところ、
短時間で集計表を作成することができました。
興味のある方は、是非以下のサイトから
音声入力を試してみてください
https://www.google.co.jp/intl/ja/docs/about/
(新しいドキュメントを作成→ツール→音声入力)
このようにAI を使ったオペレーション業務の効率化は
今後ますます進むと思われます。
仕事は極端に2つに分けますと、
「イノベーション」と「オペレーション」になります。
割合は「オペレーション」が95%、
「イノベーション」が5%程度だと言われています。
オペレーションはいわゆるルーチンワークで、
アウトプットが業務時間量に比例する仕事を言います。
一方、イノベーションは新しい何かを生み出す仕事で
こちらはかかった時間などは 関係ありません。
短時間でできることもありますが、
多くの場合、想定外の問題が次々発生して
世に売り出せるまで、想定より長い時間を要します。
そのため イノベーションは大変な金食い虫でして、
成果が出ないと社内は、「イノベーションなんか
やめてしまえ」の大合唱となります。
しかしそこでやめてしまうと
将来の我が社を支える大黒柱が育ちません。
よってイノベーションを生み出すには
次のような対策をする必要があります。
1)イノベーション部門を社長直轄事業にして、
「やめてしまえ」と言われない環境におく
2)担当者を短期の人事考課の対象から外し、
結果は伴わなくてもマイナスの評価としない
3)イノベーションが起きるまでオペレーション部門が
それを支えるのだと知らせ、オペレーション部門は
生産性の向上に努める
このうちオペレーション部門の生産性向上に関しては、
冒頭でお伝えした音声入力を始め、
AI や IoT を活用し、手間のかかっていた作業を
短縮化・自動化することが肝要かと思います。
先日私はイタリアでの企業視察研修会に参加してきましたが
配布された資料は全て英語で書かれていました。
恥ずかしながら私は英語ができません。
現場では同時通訳者のおかげで学ぶことができましたが、
日本に帰って学んだことを振り返る時には
どうしても英文の資料を読む必要があります。
そこにストレスを感じていましたが、
こちらも先ほどと同じ Google のサイトで
あっという間に簡単に無料で翻訳することができました。
音声入力と合わせて大変感激をしました。
https://www.google.co.jp/intl/ja/docs/about/
(新しいドキュメントを作成→ツール→ドキュメントを翻訳)
会社のオペレーション業務の生産性を上げることは、
イノベーション業務に必要な時間と資金を生み出し、
ワクワクする未来事業の芽を育てることです。
AIや IoTは、使ってみると驚きと感激の連続です。
どこまで業務をラクに楽しく効率化できるか、
挑戦してみてはいかがでしょうか?
2019/06/13
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」vol.346
by V字経営研究所 代表 酒井英之
コラム『自分の考え方をアップデートしていますか?』
今年の大河ドラマ「いだてん」。
皆さんはご覧になっていますか?
日本のオリンピック初参加から誘致までを描くドラマで
主に大正時代の出来事を描いています。
面白いドラマですが、視聴率は10パーセントに届かず、
低空飛行が続いています。
その原因について、私は以下のような「観たくないシーン」を
多く見せられることがあると思っています。
「ところ構わずタバコを吸い、吸い殻を捨てる」
「男性が女性はこういうものだと決めつけ差別する」
「仕事のために家庭を顧みない、説明もしない」
「芸のためなら、呑む・打つ・買う・何でも許される」
「勝利至上主義で、敗者を許さず追い詰める」
これらは私たちがここ数十年の間に
改めてきたわが国の古い価値観や習慣です。
それらがドラマの中で当たり前に描かれているのです。
これらの価値観は戦国や幕末ドラマでも描かれます。
が、まったく別次元の世界なので違和感はありません。
ところが、ほんの100年前、現代につながる話だと、
「嫌な世の中だ」と、違和感を覚えてしまうのです。
このことは企業経営でも同じではないかと思います。
ほんの少し前の考え方を企業が当たり前と考え、
社員に押し付けると、社員はもちろん
生活者誰もが違和感を覚え拒否反応を示すのです。
例えばコンビニエンスストアにおいて
人手不足の影響から深夜営業を辞めたいと言った
店主に対し、本部が許さない事件がありました。
深夜営業をやめると、深夜のデリバリー体制が崩れます。
そのため本部はあくまで24時間にこだわりましたが
現在見直しを余儀なくされています。
なぜなら出店者を募集しても集まらないからです。
コンビニの店長になりたいと思う人が
いなくなってしまったのです。
あるいは関西の老舗企業が育児休職をとった男性に対し
職場復帰後即転勤命令を出し、
それを不服に思った社員が退職をする事件がありました。
これは男性社員が育児休職を取ることへの
見せしめではないかとネット上で大炎上しました。
会社は「そのような意図はない」と弁明していますが、
この会社は採用面で大きなダメージを受けたことでしょう。
今の潮流は、社員ファーストです。
少子化、高齢社会の中で家族の絆が第一です。
それなのに
「お客様のために24時間日身を粉にして働け」
「家族のためではなく会社のために働け」などの
メッセージを発すれば、拒否されて当たり前です。
私のクライアントで、ある地方都市の社長は、
社員のAさんを東京に転勤させたいと考えましたが、見送りました。
なぜならAさんは今春、子供が関西の学校に通い始めたばかり。
そのタイミングでAさん東京に行けば
家族がバラバラになってしまいます。
そうした社員一人ひとりへの個別事情への配慮が
中小企業経営者の思いやりであり、人望をつくります。
炎上ニュースを見つけたら、
なぜ炎上しているのか確認しましょう。
そして、現状に対し自分の認識とのズレを見つけたら、
自分の考え方をアップデートするよう心がけましょう。