使命は「暗夜に一燈を灯す」

この言葉は幕末の思想家、佐藤一斎先生の「一燈を揚げて暗夜を行く。暗夜を憂うることなかれ。ただ一燈を頼め」(言志四録)の一説です。

経営者はビジネスを進める中で、幾度も幾度も眠れない夜を経験します。
「何をしていいかわからない!」
「自分の行く先がわからない!」
そんな時に、自分が頼るべきわずかな「一燈」が見えたなら…
その瞬間、経営者は覆われていた不安から解放され、自分の中に力がみなぎるのを感じるでしょう。

とはいえ、勇気の一燈を自分にともすのは経営者自身。
「自分らしさとは何か」「世の中の動きや社会の課題は何か」を、客観的に把握してこそ、「自分だけの一燈」を見つけることができます。

そこに必要となるのは、他者の目線です。
客観的に現状を知り、自らを知り、課題を知ったからこそ、見える光。
例えわずかな光でも、ズシリと腹に落ちる一燈だけが、暗夜を吹き飛ばしてくれます。

その「一燈」をともすお手伝い。
これこそが、私の使命だと思っています。

肝は、目標より「在り方」

一燈を灯すお手伝いが、私の使命だと気づいた原点をお話しさせてください。
2014年、私は地域密着サービスを行うA社のV字回復に携わっていました。
A社は主力商品が好調で急成長しましたが、2年後に地域No.1のB社に同質の商品を出され、上昇がストップしてしまったのです。
差別化を考えるもうまくいかずに差を広げられ、社員の疲労感は募るばかりでした。

そんな時、A社の役員から「あり方を見直したい」というオファーをいただきます。
A社は、同じく地域密着企業である「ネッツトヨタ南国」をベンチマークしていました。「ネッツトヨタ南国」は他カーディーラーとは一線を画すサービスで、地元から高い支持を得ていたオンリーワン企業。

理由は戦略や戦術の違いでしたが、実はもっと根本的なところにありました。
それが「私たちはどうありたいか」を言語化し、社内で共有できていることでした。

そこで私は、A社内で「わが社はどうありたいか」を言語化するプロジェクトチームの発足を提案。社員代表8名が3ヶ月検討し「こうありたい」を伝える言葉ができました。
その言葉は、A社の社員ならば誰もが「私はそのために入社した。今日もそうでありたいし、明日もそうでありたい」と思えるものでした。

早速この言葉を社名のロゴの上にタグラインとして表記し、社内で共有するためのオリジナルDVDも作成。さらに想いを実行に移す14カ条の行動指針を策定し、行動した社員は表彰する制度を導入しました。

結果、A社は変わり始めました。
B社を意識して戦略を練り、その動きにとらわれていた視点が、「お客様」へと移行したのです。お客様を見て、お客様のことを考え、お客様に徹底的に寄り添う。そのために必要な商品とサービスを開発し、提案する。
業績は、どんどん向上していきました。

私は改めて「どうありたいか」を言語化する大切さを知りました。唯一無二・自社独自の「ありたい姿=理念やビジョン・コアバリュー」を皆で描き、皆で共有することが、会社を強くするのです。

この時のA社の姿が。前述の佐藤一斎先生の言葉を体現してくれました。

誰もが納得し共感する一燈があれば、企業はそれだけで力強く闇の中を進んでいけるのだと、私は確信したのです。

以来私は「業績のV字回復支援」から「理念・ビジョン開発」に軸足を移します。
現在、A社と同じくオンリーワンとして強く必要とされる企業が誕生しています。
それを見る時、私はとても嬉しく幸せな気持ちになります。

コンサルタントは経営の黒子です。
今後も、私の座右の銘である「人生送りバント」と共に、経営者が暗夜に頼む一燈づくりを、陰ながらお手伝いしてまいります。

人生理念は「横同観」

人生理念とは、どんな時でも、「こうありたい」と願う自分の姿勢だと思います。
「人生理念があれば、人生に迷いがなくなる」と経営理念協会の窪田貞三理事長に教えられたことから、心に決めました。

そんな私の人生理念は「横同観」。
横同観とは「人の横に立ち、ともに同じ夢(ビジョン)を観る」という私の造語です。
図にすると下のように、相手の横に立ち同じビジョンを観ながら、ともに実現することを表わします。

ところが人はつい、横ではなく向き合って相手を評価し、時には「ここを直せ、あれをこうしろ」と指示・命令します。
すると相手の中に「やらされ感」が生まれます。やらされ感は相手の思考を停止させ、独創性を奪います。

お客様や仲間との関係がうまくいかない時、私は「向き合うのではなく、横に立っているか」を考えます。
横同観ができていない時は、夢の共有ができておらず、知らず知らずのうちに、自分の思いを一方的に押しつけている傾向にあります。
それに気づいたら、即座に改めて相手の夢やビジョンを確認し、修正。
意識することで誰とでも良い関係が築ける「横同観」は、ともに進む道をスムーズにしてくれるのです。