vol.502「なぜWBCを見ていると幸福を共有できるのか」

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.502

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

「なぜWBCを見ていると幸福を共有できるのか」

 

WBCが盛り上がってますね。
私もとっても楽しみにしています。
3大会ぶりの優勝、是非勝ち取って欲しいですね。

 

「なぜこんなに盛り上がるのか?」について考えてみました。
2006年当時、メンバーだった野球解説者が言うには、
当時の東京ドームでの開幕戦は、
1万人ちょっとしかお客さんが入らなかったといいます。

 

まだ、WBCの何たるかを
日本中が認識していなかったからでしょう。

 

ところが、以降2度の優勝で、WBCで勝つことの
意義と感動を私たち国民は知ってしまいました。
すると「もう一度あの感動を味わいたい」と思うようになります。

 

また、栗山監督が「WBCに選ばれたい選手が多くて困っている」と
インタビューで語っていました。
今の選手たちは、2度の優勝を子供の頃にテレビで観て、
「あんな風になりたい」と夢に描いて野球を続けてきた人達です。

 

選ばれた選手たちには「自分で夢を描き夢に挑む力」を
多くの子供たちに証明してみせるために、
ぜひ優勝してもらいたいです。

 

一度素晴らしい体験をすると、人間の感覚はまるで変わります。
芸術家を育てるには、子供の頃から
一流作品に親しませると良いと言われています。

 

例えば一流の音楽家を目指すのであれば、
子供の頃から世界中のコンサート会場を回り、
一流のオーケストラや演奏を聴いて
一流とは何かを体感する機会が欠かせません。

 

かつて高級な菓子メーカーの大番頭の専務に
「私は今、6年後に社長になる予定の
後継者の育成を仰せつかっているが、
どのように教育したらよいか?」と質問されたことがあります。

 

その時私は、「一流の世界中の菓子店の菓子を食べ歩くこと。
そのパティシエに会い、直接話を聴くこと」と応えました。
一流を知れば、突き抜けているか否か、
ひと目で見抜くセンスが磨かれます。

 

同時に、それと比較することで自分の未熟さが分かります。
未熟さがわかれば、現状で満足できなくなります。
そのために、数多くの一流に触れることはとても大事なのです。

 

私のクライアントに、耳鳴りに悩まされた社長がいます。
昼も夜間も、すごい耳鳴りがするのです。
そこで病院で検査を受けてみましたが、異常は見つかりません。
医師は「もう少し様子を見ましょう」というだけです。

 

しかし、耳鳴りは続きます。
社長はいろんな病院を訪ねました
その中の一つに、名古屋市立大学付属病院(名市大)がありました。
ここの先生だけが「ひょっとしてあの病気か?」と調べてくれました。

 

検査の結果、社長は10万人に0.6人が発症する
大変珍しい病気だということがわかりました。
通常、静脈と動脈が別々に流れていますが、
耳の後ろで血管がくっついていてしまい、
動脈の中に静脈が流れ込むという現象が起きていたのです。

 

名市大の先生は、この病気の存在を知っていました。
そして手術をしてくれました。
その結果、社長は見事に快復し、
今は何事もなかったかのようにお元気にされています。

 

このような病気が存在すると知っていて、
治療法が分かれば、人は対処できます。
が、知らない人は「様子を見ましょう」としか言えません。

 

私はこの社長の体験談を聞きながら、
社長がそのような腕の良い医師と巡り合えて、
本当に良かったと思いました。

 

そして、同じ医者でも「知っている人」と「知らない人」、
「治した経験のある人」と「ない人」では
こんなにも違うのだと、改めて驚きました。

 

WBCも同じです。
かつて、侍ジャパンは、高い目標に挑戦し、
世界一になるという経験をしました。

 

組織で高い目標を一度クリアすると、
組織の中に「自分たちだってできる」という自信ができます。
そして次に高い目標に挑む時に、
「大丈夫、何とかなる!」と楽観視できるようになります。

 

京セラ創業者の稲盛和夫さんの「成功の鉄則」である
「楽観的に考え、悲観的に計画(準備)し、楽観的に行動する」の
最初の『楽観的に考える』ができるようになるのです。

 

人は困難な課題に直面した時、「どうしよう、どうしよう…」と
悲観的になる場合があります。

 

一方で、「大丈夫。何とかなる」と
楽観的で前向きに考えることもできます。
この前向きと楽観は幸福の一因子だと、
幸福学の権威である慶應大学の前野隆司教授が
著書『幸福な職場の経営学』の中で述べています。

 

WBCのメンバーも我々ファンも
今、そのような幸福感を共有しています。
これは大きな財産です。
失敗を恐れずに挑戦する組織になるからです。

 

ただし、あまりに楽観的に考え、
自信過剰になると、人は失敗します。
太平洋戦争で敗れた時のわが国は、まさにそうでした。

 

そうならないよう計画を立てる時はできるだけ
悲観的に考え、準備をします。
稲盛さんの真骨頂はまさにここにあります。

 

計画は万が一のケースも想定した悲観的でなければいけません。
そして行動する時は、「ここまで準備したんだから大丈夫だ」と
言えるだけ準備をして行動します。

 

こうした風土が根付いてる組織は、強いです。
ですから、一度高い目標にチャレンジし、
何が何でもクリアするという経験はとても大事です。
組織の「勝った記憶」が次の基準を創るのです。

 

また、「ああなりたい」と思える
ベンチマーク先を持つことも同じぐらい大切です。
自分の至らなさを知ることで、
「もっと成長しよう」という欲が生まれます。

 

あなたは今、高い目標に挑戦していますか?
ああなりたいベンチマーク先を持っていますか?

 

あなたの今の挑戦は、やがて組織の基準となり、
楽観的で前向きな幸福な風土を生み出します。
是が非でも達成してくださいね。