vol.497「最強寒波の日に考える『安全第一』の正しい伝え方」

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.497

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

「最強寒波の日に考える『安全第一』の正しい伝え方」

 

“最強寒波”がきてます。
各地の交通網に影響が出ているようですが、
あなたの街の様子はいかがですか?

 

私も、25日午前の研修と午後の講演会が
2つともリスケになりました。
台風でのリスケはよくありますが、「雪で」は初めてです。
安全第一の主催者の判断と行動に感謝します。

 

さて、QCDSという言葉をご存知でしょうか。
お客様に選ばれる基準を表した言葉ですね。
Q=品質
C =コスト(価格)
D =納期
S =安全です

 

安全は社員からもお客様、取引先からも
選ばれる上でとても重要な概念です。
4つのうちに最後に書いてあるからと言って、
軽んじてはいけません。
「安全第一」というくらい、何よりも大切なのです。

 

安全はディズニーランドでも徹底しています。
ディズニーランドは社員が守るべき4つのことを
SCSEと伝えています。

 

S =安全(Safety)
C =礼儀正しさ(Courtesy)
S =ショー(見た目の美しさ、清潔感)(Show)
E =効率(Efficiency)

 

そしてディズニーランドは、
この順番に大切さだと言っています。

 

安全は礼儀正しさに優先します。
更に見た目の美しさは効率に優先します。
逆に言えば非効率でも、礼儀正しさを捨てても
安全を第一に守れということです。

 

例えばパレードを見ようとして、
ゲスト(客)が沿道の木に登ることがあるそうです。
その人に対しキャスト(社員)は、丁寧な言葉で
「危険ですから降りて下さい」と伝えます。

 

ところが、抵抗する人がいるのです。
するとキャストは、礼儀正しさを捨てます。
より激しい口調で降りてもらうよう伝えます。
それでも降りない時は、このような時のために
待機している元自衛官の屈強の人物が登場します。
そして無理やりその人を降ろすのです。

 

これができるのは優先順位が明確だからです。
「礼儀正しくあれ」と「安全」とどちらを重視するべきか。
「どちらも重要だ」というのは簡単ですが、
優先順位を示すことで、現場の迷いを払拭できます。

 

わが国でも「安全第一」と言います。
安全が何にも優先するから第一なのです。
が、これがなかなか徹底できません。

 

「安全大会で安全第一だと口酸っぱく言っても
誰も聞いていないような状態です。どうしたらいいですか?」
という相談を、大企業の安全委員会の人から受けることがあります。
また、大手建設業の安全大会で講演したこともあります。
「安全第一」を全社員で共有することは、
簡単なようで難しい課題なのです。

 

そこで、ディズニーランドに習って
「安全第一」の伝え方を工夫してみましょう。
ポイントは3つです。

 

1つ目は、「第一を徹底するには第二を明確に示す」です。
ディズニーランドでは「礼儀正しさ」が重要だと
キャストの誰もが知っています。
接客業ですから当然ですね。

 

が、それ以上に安全が重要だと示されているので、
本当にこれが大事なのだと伝わります。
「安全第一」と言うなら「第二は何か」をしっかり示しましょう。

 

特に日本人は、効率を優先する傾向があります。
安全を優先して機械を止めれば、
それだけ損が発生する可能性があります。

 

時間当りの生産個数や一個当りの生産時間などを
綿密に管理している会社では、
その数値が落ちると仲間に迷惑をかける心配もあります。
その気持ちが強くなりすぎると、危険を察知しても
機械を止めることに躊躇してしまいます。

 

この躊躇を取り除くには、優先順位を明確にすることです。
「安全は効率に優る。わが社は利益第一ではなく
安全第一なのだ。安全のために十分な時間とお金をかける。
それがわが社の当たり前だ」と明確に伝えると良いでしょう。

 

ポイントの2つ目は、重要度順に伝えることです。
「QCDS」ではSが最後に来てしまいます。
安全第一を言いたいのなら、
Sを最初に持ってくる社内用語を創られるといいでしょう。

 

昨年問題になった日野自動車のデータ改ざん事件は、
納期を優先するあまり検査結果に偽ったことが原因でした。
これはQよりもDを優先した結果です。

 

こうした会社はディズニーランドがSCSEのEを
最後に持ってきているように、 SQCDのように
「Dが最後」であることも強調すると良いでしょう。
頭文字の順番は、優先順位を示す意味でとても大切です。

 

そしてポイントの3つ目は、
なぜこの優先順位なのか、事例を添えて伝えることです。
ディズニーランドの事例も、客の木登りに対する
キャストの対処事例があるからこそ伝わります。

 

あんないつも手を振ってニコニコしている人が、
安全のためには激しい言葉を発する人に豹変するのです。
そうした事実が安全の大切さを物語っています。

 

事例を伝える時、伝え方として注意したい点が2つあります。
一つは抽象化せず具体的に伝えることです。
具体的であればあるほど、その危険性が
生々しく迫力を持って伝わります。

 

もう一つは、トップがこの事件をどう受け止めたか、
その感情を伝えることです。

 

一体感は、感情の共有から生まれます。
トップが「私は悲しい」という感情を全社員に伝え共有すると、
本当に安全を第一に行動しなければいけない」という思いが
聞いている人の中に湧いてきます。

 

テレビのアナウンサーニュースを報道する時、
この感情の共有はほぼありません。
受け止め方は「人それぞれ」という前提に立っているからです。
しかし、経営者が安全第一を伝える時は違います。
様々な受け止められ方をしては困るのです。

 

自らの感情を言葉にし、皆でその感情を共有する。
これが二度と事件を起こさないスタートになるのです。

 

もし、この先不安全な事件が発生したら、
その原因に現場の「どちらを優先した方が良いか迷った」が
なかったかを振り返ってみましょう。
そして、二度と迷わなくていいように優先順位を付け、
それを仲間に徹底しましょう。

 

安全はそこにあるものではなく、
一人ひとりが意識して創るもの。
日々その姿勢を貫いてくださいね。