vol.477 『第7波来襲!これは何のチャンスかな?』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.477

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『第7波来襲!これは何のチャンスかな?』

 

コロナ第7波の勢いが止まりません。
私がクライアントへ出かけて行き、
1日社長と一緒にいると、その間、社長のスマホに
社員から「陽性になりました」とのメールが、
何通も入ってきます。

 

ただ、そういう罹患者が出ても、
現在は昨年までのように慌てる経営者はいません。

 

どの職場でも、それをやむを得ないこととして受け入れ、
少ない人数で業務をどう回すか、
最善策を考える力がついているようです。

 

コロナ禍以降、変わった価値観の一つに、
「休みを取りたい」という人に、
どこまで会社が寛容になれるかがあります。

 

コロナ禍前は、「こんな繁忙期に休まれては困る」と考え、
働き方改革と言いながら、社員にとっては
休みが取り辛い環境が残っていました。
それを思えば、昨今の寛大さは劇的な変化です。

 

以前、見学させていただいた滋賀県湖南市にある
社員数80人の溶射加工の(株)シンコーメタリコンでは、
全社員に、必ず年に1回は7日間連続休暇を取得するよう、
義務付けています。
https://www.shinco-metalicon.co.jp/wlb/index.html

 

土日が休みであれば、5日間の有給休暇を前後にとれば、
7日連続休暇になります。同社ではこの制度を
「ドリームセブン」と名付けています。

 

ドリームセブンの採用上のインパクトは大きく、
現場仕事が大変きつい会社でありながら、
多くの入社希望者を集めています。

 

同社の立石社長はドリームセブンを実施することで、
社内の多能工化が進んだと言います。
誰かが7日間もいないとなると、
その仕事を誰かが代わらなくてはいけません。

 

そのため、休む予定の人が、代わりを務めてくれる人に、
仕事を教えることが必須になります。
全員がドリームセブンを取得しなければならないので、
自分が休む時は、誰かに自分の仕事教え、
誰かが休む時は、自分がその仕事を覚えて取り組みます。

 

こうしてマンツーマンで教え合う習慣が
自然と社内に発生します。
その結果、それまでなかなか進まなかった多能工化が
一気に進むのです。

 

多能工化はしたい。しかし、なかなか進まない…と
悩んでいる会社は少なくありません。
その原因は、動機付けにあると私は思います。

 

ほとんどの社員が、「今のままで充分。
ただでさえ忙しいのに、新しいことなどしたくない」と
思っています。そして
「何で多能工にならねばならないか」と反発します。

 

そこで、多能工化が自分にもメリットがあると
気づいてもらいます。
例えば「誰もが休みたいときに
休める体制にするためだよ」と伝えます。

 

また、教える側も「どうやって教えていいかわからない」と、
教えることへの不安を抱えています。
それを克服するためには、
教え方を学んでもらう必要があります。

 

このときお手本にすると良いのが自動車教習所です。
運転免許取得は大きく4段階に分かれ、
4段階目が仮免で実践のOJT指導、
3段回目の最後に実習と知識の試験があります。

 

その前の第1,第2段階では、座学と実践を交互に学びます。
そして、履修したら見極めのハンコをもらいます。
ハンコが増えていくとそれがやりがいになります。

 

このプログラムを真似します。
伝えたいスキル習得までのステップを段階的に分け、
最終段階を独り立ちの試運転期間とします。
その前段階で、知識と実践を交互に学ぶ機会をつくり
毎回評価して見極めのハンコを押し、成長を見える化します。

 

そうすると、教える側も教えらえる側も
自分が今、どの段階にいるのか、
次は何をクリアすればいいのかイメージを共有できるので
指導がスムーズに進みやすいのです。

 

休みが増える=多能工化のチャンスですが、
いきなり多能工化は無理、と思っている人には
「バディ制」導入のチャンスと考えてみましょう。

 

バディ制とは大事な顧客や仕入れ先、業務を
1人ではなく2人1組で担当する
ペア担当制度のことです。

 

映画『シン・ウルトラマン』の中で
主人公の斎藤工と長澤まさみがコンビを組みますが
映画の中では、お互いをバディと呼び合っています。
今はコンビと言わずに「バディ」と言うのです。

 

このバディ制を、私は多くのクライアントで
生産性が上がる方法として導入してきました。
そして、例外なく業績向上につながっています。

 

理由は、主に3つあります。
第1は、難しい課題に対して、2人で相談して対処できること。
第2は、1人が長期に休んでも、もう1人が出勤しているので、
業務に支障がなく、客先などに迷惑をかけないこと。
第3は、お互いを尊敬し、承認し合えることです。

 

つまり、1人で抱え込んであれこれ悩まずに、
安心しながら仕事できるのです。

 

マガジンハウス社のファッション専門誌『anan』が
最近「バディ特集」を組んでいます。
タイトルは「ふたりだから強くなれる」。

 

登場したのは千葉ロッテマリーンズの
佐々木朗希投手(20)と松川虎生捕手(19)。
完全試合を達成したときのバッテリーです。
若手の2人が偉業を達成したのは、バディ効果でしょう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d79dd630fc1e6684cabeeb692de997de3b63fbeb

 

また、神田昌典先生の近著
『未来実現マーケティング』の中でも
「なぜ二人組だと、成果が出るのか」が記されています。
「仕事が創造的になればなるほど、その解決策を
一人で見つけるのは難しくなっている」がその理由です。

 

第7波はますます広がりそうです。
現場のやりくりは大変ですが
このようなときこそ
「これは何のチャンスかな?」と、考えてみましょう。

 

そして、誰かが休んでも
誰かがそれをカバーできる体制=多能工化やバディ制の
導入を模索してみましょう。