vol.395『ブレない心のつくり方』

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.395

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『ブレない心のつくり方』

去ったかもしれないコロナ禍が、
実はすぐそこに居座ったままで、
暗い影を落としています。

 

ANA、日本航空、JR各社の業績が大変厳しい…
リニア延期は避けられない…
米国ブルックブラザーズ経営破綻…
五輪チケットは希望者に払い戻し…
東京で新たな感染者200人超…
こうした事実は社会不安を増大します。

 

こんなとき、経営者は目先の売上獲得のために
いろんな事業に手を出しがちです。

 

が、それらの中には
今すぐ収益に繋がらないの事業も多数あります。
すると資金ばかりが流出し、
経営はますます苦しくなっていきます。

 

こうした環境下に経営者に必要なのは、
ブレない心です。

 

今後、97年の拓銀・山一の破綻や
08年のリーマンブラザーズ破綻の時と
同じくらいの衝撃が走るかもしれません。
が、そんな時でも平常心を保てるよう、
日頃から訓練しましょう。

 

では、どうやってそれを訓練したら良いのでしょう?

 

その訓練方法を、厚生労働省の
「働きやすく生産性の高い魅力ある成長企業賞」で
最優秀賞を受賞した河合電器製作所の広報担当、
神田宏美さんから教えていただきました。

 

近年、多くの会社で
給与や賞与が業績に連動する仕組みを導入しています。

 

しかし、これを自分だけで、
コントロールすることはできません。
業績は、どうしてもお客様の好調不調や、
景気変動など『外的要因』に左右されます。
それに依存すると、不満や不安ばかりが募ります。

 

そこで同社は、他人から与えられるのを待つのではなく、
一人ひとりの社員が内側からワクワクを作り上げていく
『内的要因』を強化する教育をしています。

 

内的要因とは、「自分の楽しみ方を自分で作る」ことです。
不況の時は不況の時の楽しみ方を、
好況の時は好況の時の楽しみ方を、
社員が自分で身につけるのです。
そうすれば、継続的に毎日が楽しくなります。

 

例えば、ディズニーランド(TDL)に行く時。
多くの人が、とてもワクワクします。
数日前から興奮状態で、東京駅に着いて舞浜駅に着いて、
パークに入っていくまでずっとずっと興奮状態です。

 

この興奮状態は、TDLに行くこと事態が
非日常的だから生まれるものです。

 

ところが、これが毎日毎日続いたらどうでしょう。
いくらTDLでも、さすがに飽きるでしょう。

 

では、TDLに連続10日以上通って、
それでも毎日を楽しむには、どうしたらいいでしょう?

 

このときは、毎日楽しむ方法を
自分で自分に作るしかありません。

 

例えば、「隠れミッキーをトータルで100個探す。
それをSNSでアップする」。
そのような自分なりの楽しみ方を見つければ、
10日以上TDLにいても、ずっと楽しめるでしょう。

 

仕事も同じです。
モチベーションの内的要因である
「自分の楽しみ方を自分で作る」ことを
社員一人ひとりが作ることができれば、
毎日仕事を楽しむことができるのです。

 

例えばトイレ掃除をした時に、
誰もが「うわあ汚くて嫌だなー」と思う人がいます。
その一方で、
「一生懸命やってきれいになったら楽しいじゃん」
「誰かがキレイになったと喜んでくれたら嬉しいじゃん」等の
楽しみを見出して行動できる人がいます。

 

こういう人は心の中に安定感を持つことができます。
そういう人が増えると、組織としての安定感が増します。
それは、どんな状況でも「この仲間となら大丈夫」という
安心感をも生み出します。

 

そんな人になるために必要なのが、
人としての心の成長です。
視野が広く、知識や道徳、感動体験が豊富であれば、
問題が発生した時に、
その問題を楽しみながら解決するための選択肢を
より多く出すことができます。

 

河合電器製作所では、合理化で生み出した時間を、
皆で論語を読んで学び合う時間にしたり、
インド映画を観てその感想を語り合ったり
仕事とは関係のない、牧場に行って酪農を体験したりして
一人ひとりの教養を深めています。
それが、『内的要因』を生み出す選択肢を増やしているのです。

 

同社が他社と決定的に違うのは、ここです。
ところが多くの会社は、合理化で生み出した時間を
追加の受注で埋めてしまいます。
その結果、受注の特定企業への依存度を増やし、
不況期にブレてしまう要因を大きくしているのです。

 

「危機=危険+機会(チャンス)」といいます。
冒頭に申し上げましたように今後、
衝撃的なニュースが流れるかもしれません。
そんなときは「これはいったい何のチャンスだろう…」と
自問自答し、自らの解を導き出しましょう。

 

そして、経営者として「ブレない心」を維持し、
組織の中のワクワクを育てていきましょう。